茶箱点前はひふへほ

市販されている裏千家茶道の教本に「茶箱点前全伝」があります。

卯の花点前
雪点前
月点前
花点前
和敬点
色紙点

このうち、卯の花点前、雪点前、月点前、花点前は裏千家11代玄々斎が考案したもので、若干の改良を加えて今に伝えられているようです。
また、和敬点と色紙点は14代淡々斎創案の点前とされています。

全てに共通するのは、畳の上に茶碗を置いて茶を点てないということで、茶箱の蓋の上に置いたり(卯の花)、掛合の上に置いたり(雪)、器据の上に置いたり(月)、盆の上に置いたり(花)、薄板の上に置いたり(和敬)、古帛紗の上に置いたり(色紙)と、手を変え品を変え、変化をつけて茶を点てる作法となっています。

点てた茶をお客に出す時も、畳の上に直接出す和敬点前を除いて、他は古帛紗を拡げた上に茶碗を置くといった具合です。

多くの関係者から「あり得ない」と指摘されるのが卯の花点前で、茶箱の蓋の上に茶碗を載せて茶を点てることから、蓋に茶碗の高台の跡が傷となって残ってしまうとの言葉を聞きます。
教室などの稽古使いと割り切った茶箱ならいざ知らず、自分の大切な茶箱に傷が付くことを良しとする人は恐らくいないのではないでしょうか。

とは言え、これは致し方ないことで、11代家元が考案した点前作法の核心を勝手に変えることなど、およそ出来る筈がありません。
日常的には、傷が付かないように何らかの工夫をして点てる以外に方法はないようです。
このような事情からでしょうか、お茶会で「卯の花点前」を見たことはありません。

茶箱は、道具一式をコンパクトに収めた持ち運びに便利なものとして、初めは木地などで作られていて、傷の心配などしなかったのかもしれません。
後に、段々と華美になり蒔絵の茶箱などが作られるようになり、美術品の様相を呈するようになったのかもしれません。

他流派でも茶箱点前はあるようで、例えば表千家茶道では茶碗は畳の上に置いて茶を点てるといいます。

蝉しぐれの日々です。

蝉