雄雛・女雛は左・右

徳川美術館で催されている尾張徳川家「雛まつり」展では、男雛は向かって右側、女雛は向かって左側に置いてあります。

※美術館ロビーの雛人形(撮影可)

この配置について、蓬左文庫においてあるパンフレット「ひなを楽しむ」は次のように解説しています。

【男雛(おびな)と女雛(めびな)の並べ方】
「伝統的に男雛は向かって右、女雛は向かって左に飾られました。現在の男雛が左、女雛が右とする飾り付けは、昭和3年(1928)に昭和天皇の即位式の時の御真影を参考にして、東京の人形業界がお雛さまの飾り位置を置き換えたことから、普及したためだと言われています。皇室が明治時代に導入した西洋のマナーに基づいていると考えられます。」

まったくその通りであります。
従って、徳川美術館では昔の配置通りに、男雛は向かって右ということになります。

古来、日本では中国の影響を受けて「左上右下」、即ち、左を上位、右を下位としてきました。
古代中国では「帝は北に座して南面する」とあり、南を向く帝から見て左側は太陽が昇る東、右側は太陽が沈む西ということから、帝から見て左側(帝に向かっては右側)を上位、帝から見て右側(帝に向かっては左側)を下位としたようです。

京都御所の紫宸殿(南殿)は南を向いています。
左大臣が右大臣よりも位が上であったことからも、また東京に遷都するまでは左京区(御所から南を向いて左側)に貴族の邸宅があったことからも、左右の関係は知ることができるようです。

そういえば、平成21年に松隠軒で催された「平成の名香合」では、左・右の順に六十一種名香が炷き出され、優劣が競われていました。
有馬頼底氏・徳川義崇氏・近衛忠大氏・冷泉貴実子氏・蜂谷宗玄家元・蜂谷宗苾若宗匠の六名で行われた「平成の名香合」はNHK・BSで放送され、今では貴重なビデオとなっています。

香道一口メモ・133【留め木】

留め香ともいう。近世ではもっぱら沈水香を移り香させたからこう呼ぶ。これを行うのに、長さ1m、直径約1.5㎝の漆塗りした十数本の棒を組み合わせて、棒の先や交差する個所に朱房を飾り下げ、角形に広げられる伏せ籠(ふせご)を用いた。これに衣服をおおい掛け、下から香気が上昇しやすいよう水盤に乗せた板の上の火舎(ほや)香炉に香をたく。

※鳩居堂カタログより