遠州槿

遠州槿(むくげ)の純白の花が咲き出しました。
底紅の宗旦槿に先駆けての開花です。

昨年は7月に入ってからの開花と記憶していますので、一週間ほど早いようです。

今日の名古屋は最高気温33.5度の真夏日となり、暑い暑い一日でした。
今日のように急に暑くなったりすると、体調を合わせるのが大変ですぅ~。

でも、夏の花である槿にとっては、炎天は望むところなのかもしれません…。

香道一口メモ・166【香の序破急①】

物ごとの展開のさまをたとえていう三語を聞香の世界にも応用している。香具なら重香合、志野袋のひもの解き方に、盤物組香のケマリ香では鞠(まり)の手、留め足、沓(くつ)直しというケマリの三術語をこれに当て聞香する。一炷(ちゅう)ずつ答えを記すふつうの形式とは異なり三炷聞いては答えを調べ、その出順を序破急の三文字で記していく。

※【序破急】
雅楽・舞楽から出て、能その他の芸能にも用いられる形式上の3区分を表す言葉です。世阿弥の『風姿花伝』に著されていることから広く知られていますが、広辞苑では以下のようにいくつか例があげてあります。

①楽式上の3区分。舞楽では、序は初部で無拍子、破は中間部分で緩徐な拍子、急は最終部で急速な拍子。能の舞事(まいごと)の序もほぼ同義。
②楽曲の速度の3区分。序はゆっくり、急は早く、破は中間。能で「急の位」などという。
③能や人形浄瑠璃などで、脚本構成上の区分。序は導入部、破は展開部、急は終結部。速度の序破急と一致するとは限らない。
⑥初めと中(なか)と終り。

とてもシンプルに説明してありますが、考えてみると伝統芸能をはじめとして全てのことに序破急という3段階の流れはあるように思われます。たとえ、序破急という言葉は使わないにしても…です。

茶道教室などで紹介されることがある「利休道歌」の一つに、茶入から茶を掬(すく)うときの教えがあります。

茶入より茶掬ふには心得て 初中後すくへそれが秘事也

秘事となると穏やかではありませんが、今では大事という意味ぐらいでしょうか。
茶を3回掬うにあたって、初めは少し、次はもう少し多く、最後に最も多く掬うと、ネット上に書き込みがありますが、変化を付けることが肝要ということで、初中後は序破急に通じていると云えそうです。
尤も、逆に掬っても良さそうですが、最後に少しでは余りにも足らなかったから帳尻合わせのように見えて、美しくはありませんね。

また、点前の流れにしても、初めの道具を清める所作は丁寧にゆっくりと、お茶を出し終った後の片づけの所作は速めにというのも、序破急に沿っていると云えなくもありません。
一本調子にならないようにメリハリをつけ、変化させながら美しく、茶を点てる人は花と化す?…なんてところでしょうか。

序破急が横道に逸れてしまいました。

一口メモには、重香合、志野袋の紐の解き方にも序破急があてはまると書いてあります。
所作の上で、具体的に聞いたことはありませんが、十分考えられる事柄のように思います。

※【蹴鞠香】
蹴鞠(けまり)の、「鞠の手」「留め足」「沓直し」の三術語を序・破・急にあてて聞香すると記してありますが、三術語が意味するところは難解です。
「蹴鞠香」については、日を改めたいと思います。

※世阿弥『風姿花伝』