歌のあとさき

今日から3月。
名古屋の最高気温は16℃と暖かく、時折吹く風にも一時の冷たさはなく、すっかり春模様です。

3月は年度末。
これからあちらこちらで卒業式が行なわれ、それぞれが希望に満ちた新たな一歩を踏み出す時季でもあります。
若者に(いえいえ、年配の方も)幸あれ!と願うことしきりです…。

組香に引かれている和歌の出処を、ひょんな事から調べ始めて二ヶ月、見たことがある歌についてのおおまかな下調べが終わりました。
当初は、『新編国歌大観』(角川書店)で和歌のアタリをつけて、『新日本古典文学大系』で「大意」を調べれば何とかなるだろうと、高をくくっていました。
確かに大方はその通りで、調べた歌集も『古今集』から『新古今集』までの所謂「八代集」が総じて多かったように思います。

しかし、『新編国歌大観』に全ての和歌が載っているわけではなく、出処に辿りつけない手強い和歌も幾つかあり、結局出処不明としておいた方が無難であるような歌もありました。

その一つが【五月雨香】の証歌。
村雨に時雨はる雨夕立の景色を空にまかふ五月雨

6月に行なうことが多かった【五月雨香】のように記憶していますが、よく知られている歌なのに出処は良く分かりません。
行き着いた先は『詞林拾葉』で、研究書物に載っていた歌の中に似たような文言の歌がありました。
五月雨は時雨夕立おりおりのけしきをそらに尽してぞふる

「五月雨、時雨、夕立、景色を空に」と、歌の感じは似ているようですが、同じ文字は18文字/31文字=0.58、即ち58%です。
(パーセントにどれだけの意味があるかは別ですね…?)
もう少し、調べてみる必要がありそうです。(^O^)

※水仙がしばらく前から咲いています。

※ユキヤナギの芽がグングン伸びています。

詩歌をちこち 【四季歌合香】

|『明應四年水無瀬宮法樂百首』
| 内裏百首續歌 水無瀬殿御法樂明應四年十一月廿二日

| 春
咲ちるも程もなけれは雲の内をせめて花にてくらしはてなや 蓮空

| 夏
あさひこの光を色の時津風空にめくりてみなみにそ吹く 宣胤

| 秋
わきてなお床も露けき時来ぬと老のね覚そおとろかれぬる (※)

| 冬
秋の色もしらて過こし小笹原しのに花みる雲のうちかな 教國

*和歌出典『続群書類従』第十四輯下

※作者は以下のように推測しました。
*蓮空=甘露寺親長(かんろじ ちかなが)
*宣胤=中御門宣胤(なかみかど のぶたね)
*(※)=後土御門(ごつちみかど)天皇…作者不書より御製
*教國=滋野井教国(しげのい のりくに)