源氏物語ミュージアム

昨日24日は午後、京都から宇治市へ向かいました。
お目当ては「宇治市源氏物語ミュージアム」で開催中の開館20周年記念特別企画展「源氏香」の展示物。(企画展は24日が最終日でした!)

企画展は、香老舗・松栄堂の所蔵品が多数展示されていることを人づてに聞いていて、ずっと気になっていた展示でした。
最終日になって、やっと京都の用事に合わせて展示物の見学が叶いました。

※宇治市源氏物語ミュージアム

企画展展示物四十点弱の内、三分の二ほどが松栄堂松寿文庫所蔵の品々でした。
豪華な屏風や古い絵本などが展示されていましたが、一番面白いと思った品は「源氏歌かるた」。
読み札には巻の名と歌一首、取り札には下の句が書かれている「かるた」で、絵も夫々に描かれている珍しい品でした。
ただ、字が両方の札とも変体仮名でしたから、読む方も取る方もちょっと大変?かも……でした。
また、掌にのせ袖の中にいれて、衣裳に香りをうつす深草焼袖香炉も可愛い品でとても気に入りました。(^O^)

後で思った事ですが、京都・松栄堂本店続きの新館「薫習館(くんじゅうかん)」2階に松寿文庫がありましたから、源氏物語ミュージアムでの企画展が終われば、品々はこちらに戻り、ひょっとすると見学可能な時期もあるのかもしれません。

ミュージアム常設展示室では、牛車と女房装束の復元、「若紫」を思わせる垣間見の場面、六條院の模型、映画などなど、展示には工夫が凝らしてありました。
図書室やショップも充実していて、色々な角度から源氏物語の世界を楽しむことができるミュージアムでした。
そうそう、五つの香りを聞いてそれらの異同をあてる源氏香が、誰でも気軽に楽しめるように大型の装置として設置されていて、答えをスタンプで押すようになっていましたが、こちらは見事に外れました。

宇治へ来たからにはと、世界遺産・平等院にも足を伸ばしました。

正門へと続く参道は大勢の観光客で賑わっていて、両側に並ぶお店も繁盛しているようでした。
確かめたかったのは、塗り替えた鳳凰堂もさることながら、源頼政自刃の場所といわれる「扇の芝」。
組香「宇治名所香」の香名にもなっている「扇芝」は、綺麗に手入れされていて、『平家物語』の頼政最期の場面を偲ばせるような佇まいでした。

※扇の芝

境内をゆっくり一周してから、宇治橋を再び渡り、橋のたもとの「通圓(つうえん)茶屋」で一休み。

※宇治橋三の間

※通圓茶屋

「通圓茶屋」は平安時代末から続くお店ということで、能「頼政」のパロディ版として、茶を点て死にした「通円」の狂言曲目を思い出しました。

京都と宇治の日曜日でした。

詩歌をちこち 【雉子香】

|『拾遺和歌集』巻第一 春 21
| 題しらず   大伴家持
春ののにあさるきぎすのつまごひに おのがありかを人にしれつつ

〔大意〕春の野に餌を探し求めて歩きまわる雉が、妻を恋い慕って鳴き立て、自分の居場所を人に知らせ知らせしている。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

※『萬葉集』巻第八 1446
| 大伴宿禰家持の春雉(きぎし)の歌一首
春の野にあさる雉の妻戀に己があたりを人に知れつつ
春野尒 安佐留雉乃 妻戀尒 己我當乎 人尒令知管
*出典『日本古典文学大系』(岩波書店)
原文では、雉の文字は偏が矢、旁が鳥で、読みは(きぎし)。

※大伴家持(おおとものやかもち)