(2020.03.15記)

しきしま【敷島】といえば、大和の国、日本のこと。

敷島と聞いて頭に浮かぶのは敷島パン「Pasco」と列車「四季島」ぐらいでしょうか。

Pascoは、名古屋市に本社がある敷島製パン株式会社のブランド名。
会社名は国学者・本居宣長の和歌「敷島の大和心を人とはば朝日に匂う山桜花」から採られているとか…。

四季島は、JR東日本が運行する10両編成の超豪華列車「トランスイート四季島」。
四季の島国である日本と敷島がかけてある絶妙のネーミングとなっています。

そして「敷島の道」といえば和歌の道、歌道のこと。(「敷島の大和歌の道」の意)
尤も、和歌の道と云われても、私的には途方に暮れてしまいますが、その道に勤しんでいる方にとっては、まさに分身のような存在であるに違いありません。

香道においても、和歌を詠むことが組香の幾つかに取り入れられています。
七夕の時季によく行なわれる「七夕香」は、短冊に歌を認めて笹竹に結ぶ所作が含まれていて、いろいろな飾り物と相まってとても楽しい組香となっています。(^O^)

もう一つ、和歌を詠むと云えば、面倒そうな組香という意味で頭の片隅に残っているのが「敷島香」です。
志野流香道の組香目録にはありませんが、古書に記されていますし、市販された本の中にもこの組香の解説が載っています。

改めて書を読む機会があり、当初はよく解らなかった組香のやり方が、今はなんとなく理解できたような気になっています。

この組香は、特にこれと決まった組み方はありませんが、組香「小草香」同断とあります。
その時折の草花を初めとして雪や月など、例えば「むめのはな(梅の花)」「ゆきのまつ(雪の松)」「あきのつき(秋の月)」の如く、五文字からなる物を香種にして「小草香」のように、例えば「むめのはな」であれば、四種を試しに一種を無試にして炷き出すといった具合のようです。

答えは、短冊に歌を認める、又は詠草形式にする、二通りのやり方があるようですが、記録の上で簡単そうなのは(と云っても、私にはハードルがむちゃくちゃ高いです!)短冊の方かと思います。(記紙に答えだけ書くのでは「敷島香」になりませんね。)

短冊に歌を認めるやり方では、歌の五句の頭に答えとなる五文字を置いて、歌を認めるようです。(私の解釈です!)
例えば、[むめのはな]の五包が打ち交ぜて炷き出され、答えを[めはむのな]の順に聞いたとすれば、<め・・・・は・・・・・・む・・・・の・・・・・・な・・・・・・>の如く、歌を即興で詠むことになります。

いやはや、とんでもないことです!

でも、昔の堂上の方々にとっては、歌を詠むことは必須の教養でしたから、詠まないことには立場がありません。

本当は香を聞き当てていても、五文字の配列が悪いと納得できる歌が作れないとして、歌のためにわざと聞き違える(文字の配列を変える)とすれば、香道の本意に反してしまいます。
また、ちゃんと香を聞き当てたとしても、五文字の配列の為に未練が残るような歌しか作れなかったのでは歌道の恥となってしまいます。
そのため、香道・歌道両方とも堪能ならずしてすべきではないとして、江戸時代中期の霊元院法皇の時代においてはこの組香を催すことは停止されていたようです。

記録の取り方については、詠草形式にするのか、いつもの記録紙の形式にするのか、「敷島香」には二通りの形があるようです。
詠草形式は面倒なので?、歌を短冊に認めたうえで、普段よく目にする記録紙の形をとった方がなんだか解りやすそうです。

とは云っても、歌を即興で、しかも答えとなる五文字を五句の頭において詠まなくてはならないので、私的にはハードルの高さは三千丈にも達するほどです。

これほど面白い組香はなかなかありません!
私にはとても無理ですが…。ハイ。(^O^)

※梅は大方終わりましたが、枝垂れ梅が残っていました。

【敷島香】

◆香は五包(小草香同断)
例)むめのはな
む として 二包で内一包試
め として 同断
の として 同断
は として 同断
な として 一包で無試

例)かきつはた、ゆきのまつ、あきのつき、はつわかな、…
但し、頭に置きようのない文字とされるラ行の[らりるれろ]の五文字は入らない物。

◆聞き方
試みを終えた後、五包を打ち交ぜ炷き出します。
答えは、香の聞きに応じて、五文字を五句の頭にして歌を認めます。

◆記録紙
小草香のように記しますが、答えとなる歌は二行で、合点は句の頭の文字右肩に掛けます。
五炷すべて聞き当てれば「叶」となっています。
※記録の詠草形式は略します。

以上、敷島香でした。(^O^)
なお、別法もあるようです。