(2017.06.25記)

旧暦では「閏五月」に入っています。(2017年7月2日は、旧暦では「閏五月九日」です)
旧暦(太陰太陽暦)では、閏月は19年に7回の割合で挿入され、太陽の運行に基づく暦(太陽暦)とのずれを小さくするように工夫されてきました。
既に、古代ギリシャ時代には考えられていたというから驚きです。
【メトン期】として国語辞書にも載っています。

閏月をモチーフにして遊ぶ組香に、閏月香(大外組)があります。

◇香は五種
春として 三包で無試
夏として 同断
秋として 同断
冬として 同断
閏として 二包で内一包試

◇聞き方
閏の試を聞いたのち、
出香十三包(春、夏、秋、冬の各三包+閏一包)を打ち交ぜたき出します。
閏は正聞とし、他は無試十炷香の如く聞いて答えます。

◇記録紙
閏の出所によって、出香の下に次の文言が書き添えられます。
一番目に閏が出れば 後睦月   二番目に閏が出れば 後如月
三番目に閏が出れば 後弥生   四番目に閏が出れば 後夘月
五番目に閏が出れば 後皐月   六番目に閏が出れば 後林鐘
七番目に閏が出れば 後文月   八番目に閏が出れば 後葉月
九番目に閏が出れば 後菊月   十番目に閏が出れば 後神無月
十一番目に閏が出れば後霜月   十二番目に閏が出れば後臘月
十三番目に閏が出れば年内立春

また、各自の点数の上の所(中段)に、閏の出の順番に応じて閏○月と書かれます。
例えば、閏が五番目に出たと聞けば「閏五月」のように書かれます。
もし、閏が十三番目に出たと聞けば「節分」と書かれます。

◇メモ
★この組香の妙味は、何よりも出香十三包を聞くことにあり、旧暦では閏月のある年は十三ヶ月となることを踏んでいます。
★閏の香だけに試があり、正聞きになっていることから、閏をちゃんと聞き分ける事も求められています。
★記録紙に書き添えられる文言(名目)は、概ね良く知られている月の別称となっていますが、六月の別称である林鐘(りんしょう)、九月の別称である菊月、十二月の別称である臘月(ろうげつ)を用いているところは、少し凝っているかもしれません。
★十三番目に閏が出れば「年内立春」とあるのは、旧暦で閏月がある年は十三ヶ月となるので、間違いなく「年内立春」(旧暦十二月の内に立春を迎えること)となるからです。しかも、旧暦で十三番目となる月に年内立春を迎えることになるからですネ…。

【余談】
二十四節気の一つである「立春」は毎年2月4日頃で、その前日が<鬼は外、福は内>で知られた豆まきの「節分」ですネ。
「年内立春」は、旧暦の十二月が終わらない内に「立春」を迎えてしまった場合に云われる言葉ですが、逆に旧暦の正月が始まってから「立春」を迎えた場合には「新年立春」と云われるようです。

古今集の巻頭の歌は、「年内立春」を詠んだ歌として広く知られています。

ふるとしに春たちける日よめる (在原元方)
年の内に春はきにけり ひととせをこぞとやいはん ことしとやいはん