(2017.07.13記)

夏の時季に咲く気高い花の一つに蓮があります。
泥沼から花茎をスイッと水上高く伸ばして、たくさんの花弁を持つ大きな花を咲かせる、なんとも美しい花です。
あの独特の花の形と色は、蓮が極楽浄土と結びつけられる所以なのかもしれません。

蓮(はす)の古名は蓮(はちす)、花が散った後にできる果実の入った花托が「蜂巣(はちす)」に似るところから付けられたようです。

この時季、蓮をモチーフにした組香の一つに「蓮(はちす)香」があります。

◆香は四種
荷葉として 四包で内一包試(*荷葉=蓮の葉)
開花として 同断
月影として 二包で無試
香風として 同断

◆聞き方
荷葉と開花の試みを聞いた後、
①まず、荷葉三包と月影二包の計五包を打ち交ぜて聞きます。
②次に、開花三包と香風二包の計五包を打ち交ぜて聞きます。

◆記録紙
全当りの人には、次の詩句が記されます。

葉展影翻當砌月 花開香散入簾風 (白居易/和漢朗詠集…176)

◆メモ
詩句の読みは、葉(は)展(の)びては影(かげ)翻(ひるがへ)る砌(みぎり)に当(あた)れる月 花(はな)開(ひら)けては香(か)散(さん)ず簾(すだれ)に入(い)る風(かぜ)

現代語訳は、蓮の葉がのびひろがって、階段の下の石だたみを照らす月の光の中で、その影がひるがえり揺れています。蓮の花が開いて、あたりにまき散らされた香りは、簾のなかに吹き入ってくる風とともに匂ってくるのです。
(*詩句の読み、現代語訳は川口久雄『和漢朗詠集』より)

『白氏文集』巻十六「階(きざはし)の下(もと)の蓮(はちす)」
葉展影翻當砌月
花開香散入簾風
不如種在天池上
猶勝生於野水中

【余談】
蓮の栽培に興味はありますが、苗を買ってまで育てる元気はなく、どこかの蓮池で種を拾ってきて、実生で育てる機会があったらいいなぁ…という程度です。(なんだか、栽培は難しそうな予感がします)

蓮池へ出かけて、花の写真を撮って満足するぐらいがちょうどいいのかもしれません…。

蓮

*志野袋の花結び(蓮)