(2018.10.31記)

立冬まで一週間、それまでは晩秋ということで駆け込みの「擣衣(とうい)香」です。

秋の夜長、何処からともなく砧(きぬた)の音が聞こえてきます、と云うのは昔々の話。
布をしなやかにし、つやを出すために砧にのせて槌で打つことを「擣衣(とうい)」というそうです。
そんな晩秋の情景を題材にした組香に「擣衣香」(大外組)があります。

◆香は六種
秋風として 二包で内一包試
秋月として 同断
夜寒として 同断
山里として 同断
村里として 同断
砧 として 一包で無試

◆聞き方
試みを終えて、出香六包を打ち交ぜて炷き出します。

◆記録紙
砧の香を何番目に聞いたかによって、銘々の聞きの下に名目を書きます。
一番目に出たと思えば 隣家砧
二番目に出たと思えば 前村砧
三番目に出たと思えば 宵砧
四番目に出たと思えば 小夜砧
五番目に出たと思えば 暁砧
六番目に出たと思えば 遠砧

全当りの人には点数の所に擣衣と書きます。
また、砧の香当りの人には寝覚、当らざる人にはと名目の下に書きます。

なお、出香の下には歌が書かれます。(勅撰和歌集323)
から衣打つこえきけば月きよみまだ寝ぬ人を空にしるかな  貫之

◆メモ
個人的には、碪=砧(きぬた)と云えば矢張り「寝覚香」でしょうか…。