茶人の刀

昨日放送されたNHK・Eテレの「趣味どきっ!茶の湯武者小路千家」の第一回は「星に祈る茶会」でした。
床の掛物は、五色の布を大きくあしらった土佐光貞の「乞巧奠」の大和絵。
番組は、お点前の順序作法ではなく、季節を楽しむ、設えを楽しむ、道具を楽しむ、お菓子を楽しむ、雰囲気を楽しむ、そしてお茶を楽しむと云った、今までとは違った視点で製作されていました。
個人的には、「待ってました!」という声を掛けたくなるような内容で、しっかり楽しめました。
冷泉貴実子氏も出演し、乞巧奠の様子、和歌と茶の湯の銘との関わりなど、いろいろとお話をされていました。

番組の途中で家元教授の何気ない一言が耳に留まりました。
「扇子は茶人の刀」という言葉です。

個人的には初めて聞く言葉でした。
「刀は武士の命」という言葉は、時代劇でも聞いたことがありますが、「扇子は茶人の刀」とはどのような意味合いでしょうか。
今まで、扇子は結界の意味合いぐらいにしか捉えていなかったので、深意にはとても興味があります…。

また一方で「茶杓は茶人の刀」と云われているようですが、天正19年に切腹した利休が削った茶杓「ナミダ」を古田織部が受け取り、筒に窓を作って位牌代わりに毎日拝んだと云う話しを聞くと、茶杓が持つ重みは何となく解るような気がします。
茶杓はそれほどまでに魂のこもった、抜き差しならぬ大切な茶道具ということでしょうか。

ところで、利休作「泪」の茶杓は、徳川美術館が所蔵し定期的に展観されています。
利休は切腹に際して、茶杓を二本削り、一本は「ゆがみ(イノチ)」と銘をつけ細川三斎に、もう一本は「ナミダ」と銘を付けて古田織部に与えたと云われています。

「刀」といえば、徳川美術館内の喫茶室で、お菓子と共に出される鯰尾藤四朗の刀を模した楊枝は大ヒットでした。

泪 *「泪」/『原色茶道大辞典』より