冷泉家の乞巧奠

今日8月28日は旧暦では七月七日、七夕の日です。
京都・冷泉家では旧暦の七月七日に、技芸の上達を願う七夕の儀式「乞巧奠」が毎年催されています。
機会があれば、是非とも冷泉家で見学したいものだと思っていましたが、今年はくじ運に恵まれ、長年の願いが叶うことになりました。

入場券

夕方6時からの開演でした。
5時半ごろ会場に入りましたが、畳の上ではなく長椅子の方に座ることができて本当にラッキーでした。

庭には「星の座」が設けられ、二本の笹竹の間に梶の葉と糸をつるし、机上には琴や琵琶、そして食物が供えられ、周りには五色の布や秋の七草が二星に手向けられていました。
残念ながら(当然ながら)、写真・ビデオ・録音などはすべて禁止となっています。
代わりに、7月7日に名古屋芸術劇場で行われた公演のチラシの写真を載せることにします。
上のカラー写真が「星の座」、下のモノクロ写真が「流れの座」の様子です。

乞巧奠*7月7日名古屋公演のチラシです。

当主夫人・冷泉貴実子氏の挨拶に始まり、雅楽の演奏、披講(和歌の朗詠)、流れの座(歌会)と催しは進んでいきました。
いつしか夜の帳が下り、披講の部では部屋の照明が消され、「星の座」の9本の灯台が幻想的な雰囲気を醸し出していました。
見学者は150名前後のように思えましたが、初めて見る光景に興味津津、ただただ静かに見守っていました。

演技する方々は、男性は狩衣(かりぎぬ)姿、女性は袿単衣(うちぎひとえ)姿?で、雅な装束に身を包んでいらっしゃいました。
部屋は明け放たれ、エアコンは効かない環境でしたから、さぞかし暑かったのではないでしょうか。

最後に挨拶に立たれた当主・冷泉為人氏の言葉は印象に残りました。
「伝統と文化は常なるもので、お金は無常、常なるものではありません。伝統と文化を伝え続けて行くことが私どもの務めです。」

8時頃に終わりましたが、門脇に当主と当主夫人が見送りに立たれ、見学者一人ひとりにお礼の挨拶をされていました。

乞巧奠を催すに当たって、半端ではない時間と人手と御努力を掛けられたことを想うと、ただただ頭が下がる思いです。

冷泉家・冷泉家時雨亭文庫の安寧を心から祈って、至福のひと時を味わった京都を後にしました。

【追記】冷泉家では、「七夕」を(しっせき)、「二星」を(たなばた)と呼ぶ習わしだそうです。
「流れの座」で詠まれた歌でも、二つの言葉は使い分けられていました。