香道一口メモ(3)/西王母の花

台風18号は、日本列島を鹿児島から北海道にかけて文字通り縦断し、各地に様々な被害をもたらしました。
近年、日本は災害列島の様相を呈しているようです。

台風一過、影響を受けたところは無いだろうかと辺りを調べていたところ、クヌギの向こうに朝日に照らされた桃色の花が目に飛び込んできました。
西王母(せいおうぼ)の花です。

西王母

毎年、9月に一度早咲きすることを思い出して確認したところ、昨年は9月21日に開花の記録がありました。
花はすっかり開いていますから、二、三日前に開花したのに気付かなかっただけかもしれません。
それにしても、早いツバキの開花です。

西王母といえば、漢の武帝が長生を願っていた際に、三千年に一度花を付け実を結ぶ仙桃を与えたと云う伝説を思い出します。
「西王母が桃」という慣用句もありますが、珍しく得難いもののたとえ、また長寿のたとえ、と辞書にはあります。
香道の組香には「三千年香(みちとせこう)」が組まれています。
また、西の仙人を束ねるのが西王母なら、東の仙人を束ねるのが東王父、ともにツバキの銘柄となっています。

ところで、陰陽五行の「木火土金水」になぞらえて、五時(春・夏・土用・秋・冬)、五方(東・南・中央・西・北)、五色(青・朱・黄・白・黒)等々がありますが、五果(李・杏・棗・桃・栗)というのもあり、桃は西に配置されています。
ということで、桃太郎の鬼退治の話へと繋がっていきます。

十二支の酉(とり)は西にあたりますが、酉の前後は申(さる)と戌(いぬ)で、西の桃太郎が雉と猿と犬を連れて、鬼門の方角(東北)へ鬼退治に出かけると云う、実によくできたお話が「桃太郎」伝説です。
鬼門は艮(うしとら・丑寅)の方角ですから、鬼には牛のツノがあり、虎のシマシマパンツを穿いていると云うことになっています。

なお、三太郎がCMで大活躍していますが、桃太郎、金太郎はともかく、浦島太郎も英雄(au)なのでしょうか…。

以上、西王母にまつわる全くの余談でした。

香道一口メモ(3)【香道用語③】

組香の香包の順位不同にするのを「打ち交ぜる」、香をたくのを「付く」、たかれた香片は一炷(ちゅう)二炷と数え一炷の香に対して三度または五度息を継ぎ聞くことを「三息五息の聞き」という。これ以外の長短の聞きは戒められている。香札を折据や札筒に入れるのを「打つ」、香盆を畳にすらせて波状に移動させるのを「船を漕(こ)ぐ」という。

「船を漕ぐ」という表現には初めて出会いました。
辞書的には、居眠りをするという意味ですから、お手前の所作としては、良い意味では使わないのかもしれません。
機会があれば、具体的な所作も含めて、意味を確かめてみたいと思っています…。