水鳥香
徳川美術館から送られてきた催事のパンフレットの中に「和の香りを楽しむ 組香」の案内がありました。
12月2日(日)、6日(木)、8日(土)に催される体験講座の組香は「水鳥香」とあります。
冬鳥の鴨、鳰、鴛を題材にしたシンプルな組香です。
◆香は三種
鴨(かも)として 二包で内一包試
鳰(にお)として 同断
鴛(おし)として 一包で無試
◆聞き方
鴨、鳰の試みを聞いた後、
出香三包を打ち交ぜ、内一包をとり炷き出します。
◆答え方
記紙には歌を書いて答えます。
鴨(かも)の香と思えば
さゆるよの氷とちたる池水に 鴨のあをはも霜やおくらん
鳰(にお)の香と思えば
池水にむすふ氷のひま見えて うちいつる波や鳰のかよひ路
鴛(おし)の香と思えば
かたみにやうは毛の霜を拂らん ともねのおしの諸声になく
※『国歌大観』で検索してみました。
| 続千載和歌集 巻第六 冬歌637
| 水鳥を 中務卿恒明親王
さゆる夜の氷とぢたる池みづに鴨の青羽も霜やおくらむ
| 新千載和歌集 巻第六 冬歌683
| 百首の歌奉りし時、水鳥 内大臣
池水に結ぶ氷の隙見えてうち出づるなみや鳰のかよひ路
| 千載和歌集 巻第六 冬歌429
| 水鳥をよめる 源親房
形見にや上毛の霜を拂ふらむともねの鴛のもろ聲になく
◆メモ
三鳥とも冬の季語です。
・鴨=冬に北から飛来する冬鳥。カモ鍋があるくらいですから肉は美味。(鶴、白鳥、雁も美味とか…)
・鳰=カイツブリの古名。日本では湖沼などにすむ留鳥。「鳰の海」は琵琶湖の別称。
・鴛=鴛鴦(おしどり)の古名。雄は美しく、背に思羽(おもいば)と呼ばれるイチョウ葉のような形の羽があります。雌は地味な色で、背部は暗褐色。雄も夏には雌とほとんど同じ色になるそうです。
【余談】
鴨や鴛鴦の名はよく知られていて鳥のイメージも湧いてきますが、鳰にはとんと馴染みがありません。
以下は『日本の野鳥』(山と渓谷社)から引いた図です。