玄猪包の折り方

旧暦ではまだ十月で、初冬、亥の月です。
暦をみると、今日は二の亥の日です。

亥の子餅(玄猪餅)がらみのお話も最後です。

平安の昔、宮中では旧暦十月(亥の月)の亥の日には、新穀でついた餅、即ち亥の子餅(玄猪餅)を畳紙に包んで下賜したと云います。
その包が「玄猪(げんちょ)包」です。

国立国会図書館デジタルコレクションに収められている『包結図説』には「玄猪包」の折り方が載っています。
アドレスはこちら → http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/848851

奥書には宝暦十四年(1764年)に認めた旨の記載がありますから、江戸時代中期に書かれた本ということになります。
すでに、平安時代から何百年もの時が流れています…。
著者・伊勢貞丈(通称は平蔵、号は安斎、1718~1784)は有職故実の研究家で、特に武家の制度・礼式などに詳しく武家故実の第一人者とされた人のようです。

『包結図説』には、足利将軍家の例が記されていますが、玄猪包には引合紙(ほぼ檀紙)三種類を位に応じて用いるとしています。
即ち、下絵を描いたもの(銀杏の葉など)、金銀箔を押したもの、ただの白紙のもの、といった具合です。

◆玄猪包の折り方◆

今回は、檀紙サイズ(39cm×54cm)の紙にしましたが、ほぼ新聞紙一面の大きさです。
檀紙は名古屋・熱田神宮南門近くの紙専門店「紙の温度」でも買い求めることができます。
「紙の温度」のアドレスはこちら → https://www.kaminoondo.co.jp

折り方は以下のような手順となっています。

①新聞紙一面ほどの大きさの紙を用意します。(練習は新聞紙一面でOK!)

②右から左へ、二つに折ります。(左辺を三等分するぐらいに…)
③更に、右から左へ折ります。(これで包みの幅が決まります)
④裏返します。

⑤右から左へ折ります。(左右の縦線(包みの幅の線)が揃って平行になる様に)
⑥下側を裏側へと折ります。(これで包みの下辺が決まります)
⑦もう一度、裏返します。
⑧図⑦の◎のラインで、上側を手前に折ります。(これで包みの上辺が決まります)
※四つとも包みの幅は同じ!

⑨図⑧の右上隅を起点として図のように折ります。(左辺側の折点は中央より少し下を目安に)
⑩包みの上辺にほぼ揃えるように図のように折ります。
⑪左側の始末を綺麗にするために、端を少し折ります。
※『図説』には折ると書いてありますが、その分だけ紙が分厚くなるので、この手順はパスした方がいいと思います。
⑫包みの左辺に合わせて端を折って、紙の間に挟み込みます。
※三つとも包みの幅は同じ!

⑬裏返します。見事に出来上がっています。完成です!(^O^)

⑭『図説』では、玄猪餅は図①の紙に下図のように置いてあります。
※出来上がった包みの様子からも、玄猪餅は小さく丸めた餅を押し広げて碁石のようにした餅であることが解ります。

なお、亥の子餅(玄猪餅)をのせる“かい敷”(下敷き)として、銀杏の葉などが出てきます。
上図のような“しのぶ”と“菊”は一の亥に、“しのぶ”と“紅葉”は二の亥に、“しのぶ”と“いちょうの葉”は三の亥の日にとあります。

⑮玄猪包の折り方・包み方は以上で終りです。(^O^)♪

もしも贈る相手の名前を認めたい場合は、更に上包を用意すると記してあります。
上包は、香道の香包と同じで下図のようにとってもシンプルですが、なんだか屋上屋を重ねるようで、無い方がすっきりします。

⑮「何の何がし」

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さて、野々村仁清(にんせい)の「玄猪包香合」の意匠です。(大きさは約10cm四方、高さ(厚さ)は約2cm。)

※『茶道美術全集7 香合』(淡交社)より。

図⑬の玄猪包の上に、色水引の十文字結びと青釉で銀杏の葉をあしらった形となっています。
果たしてこの香合が焼かれた江戸時代初期の玄猪包がこの形であったのか、それとも仁清がデザインとしてこの形にしたのかは知る由もありませんが、とにもかくにも意匠が素晴らしく、流石は仁清の作と見とれてしまいます。(^O^)

折角「玄猪包」を作ったので、お遊びで図⑬に紅白水引と銀杏の葉を添えて、仁清風にアレンジしてみました。

私的には完璧です。(^O^)

包の中のプチプレゼントは何にしようかなぁ~、なんちゃって。

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※【やり直し】
⑨⑩⑫図で、『包結図説』に載っているように⑨図の折り方をもう少し深くしてみました。
※三つとも包みの幅は同じ!

こちらの方が『包結図説』にピッタリで、達成感があるかもしれません。(表側⑬図は全く同じです!)

※【引合(ひきあわせ)紙】
広辞苑に次のような説明があります。
「男女を引き合わせる艶書用とした皺(しわ)のない檀紙(だんし)。みちのくがみ。後に普通の檀紙の異称となった。ひき。」

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【追記】
メールで送られてきた「玄猪包」です。

 Thank you. (^O^)