ミヤマシキミ

名古屋地方は昼過ぎから雨模様。
草木にとっては恵みの雨も、桜見物に出かけた人にとってはちょっと残念な雨となりました。

すっかり春めいてきて、植物はどんどん成長し、花も次々と咲いています。
満開の花の一つがミヤマシキミ【深山樒】。
ミカン科の常緑低木で花に芳香がありますが、先入観からでしょうか、この花については季節感がイマイチといったところです。

茶書『南方録』の「覚書」の中に「花生(はないけ)に入れぬ花、狂歌に」として、歌二首があげられています。

花入れに入れざる花はちんちゃうげ 太山(みやま)しきみにけいとうの花
女郎花(おみなえし)ざくろかうほね金銭花 せんれい花をも嫌うなりけり

歌では、[沈丁花・深山樒・鶏頭・女郎花・石榴・河骨・金銭花・せんれい花」が禁花とされているようです。
匂いが強い、縁起が良くない、鶏冠の形だから、名称が良くない、実の形状が良くない、骨だから、金銭だから、花期が長いから等々、もっともらしい理由をつけて、茶花には用いないとしています。(せんれい花は不明です。)
とは云っても、「河骨」は当時でも、また今日でも茶花に用いていますし、女郎花は籠に入れて秋の風情を楽しむこともあるように思います。

確かに、茶花として使わないという花が幾つかあります。(ミヤマシキミはその一つ?)
ですが、まぁ、金科玉条のように構える必要はないように思います。

西山松之助校注『南方録』(岩波文庫)の「補注」には、他書の禁花の例をあげた上で、それらの禁花が守られていたとは考えられないとも記してあります。

名古屋地方もソメイヨシノがそろそろ満開です。
お花見に出かけなくっちゃ…。

詩歌をちこち 【卯花香】

|『拾遺和歌集』巻第二 夏 80
| 屏風に   したがふ
わがやどのかきねやはるをへだつらん 夏きにけりと見ゆる卯の花

〔大意〕我が家の垣根は、春を隔ててしまったのだろうか。夏がやって来たと見えるような一面の卯の花だよ。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

※源順(みなもとのしたごう)