やるまい会2019

名古屋能楽堂で「狂言 やるまい会 名古屋公演」~先代・野村又三郎信廣十三回忌追善~が行なわれました。
今日も真夏日の暑さでしたが、満員の館内はエアコンがよく効いていて、ちょっと寒いくらいでした。

東京・京都・大阪からの助演を得て、法体・亡霊・出家などの追善供養の能と狂言の曲が組まれていました。
人間国宝の野村万作氏・大槻文蔵氏も出演、特に野村萬斎氏のオーラを纏う舞台には思わず吸い寄せられました。

今日の鏡板は若松でした。

詩歌をちこち 【五方香】

『秋篠月清集(良経)』下 雑部

|① 東 1490
月も日もまづいでそむるかたなれば あさゆふ人のうちながめつつ
〔大意〕東方は月も太陽もまず最初に姿を現す方角だから朝夕に人は眺めて暮らしている。

|② 西 1491
秋かぜもいりひのそらもかねのおとも あはれはにしにかぎるなりけり
〔大意〕秋風が吹いてくる方角も、太陽が沈む西の空も、入相の鐘の音も、心を動かすものは西方に限るなあ。

|③ 南 1492
たまづさをまつらむさとの秋かぜに はるかにむかふはつかりのこゑ
〔大意〕秋風に誘われて、はるか遠く、手紙を待っているであろう南の里へ向かっていく初雁の声。

|④ 北 1493
そなたしもふゆのけしきのはげしとや とぢたるとをもたたくかぜかな
〔大意〕北の方角は特に冬の様子が厳しいと思ってか、閉じた戸を叩きつけるように吹く風だなあ。

|⑤ 中 1494
むかしよりみやこしめたるこのさとは ただわがくにのもなかなりけり
〔大意〕昔から都の地を占めたこの里はただ、我が国の真ん中なのだなあ。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『和歌文学大系』(明治書院)

※藤原良経(ふじわらのよしつね)