御題香「望」

今年の干支は「庚子(コウシ、かのえね)」。
そして、御題は「望」です。

伝統文化・芸能の世界では、十二支の「子」と共に御題を冠した多様な品々が初春を寿ぐアイテムとして重宝されているようです。
茶の湯の世界では、勅題茶碗、蓋置、懐紙、お菓子、掛物などに様々な意匠が用いられ、特に初釜の席では必ず何かが用意されていて、参会者一同和やかに楽しむことが定番になっているようです。

茶道具のカタログを見た限りでは、今年の干支では縁起を担いで鼠と大根の絵、御題では仰ぎ見る富士の絵が多かったように思います。

因みに、鼠と大根の関係については、大根と大黒天をかけ、さらに大黒天の使いは鼠というお話があることから、とネット上にあります。
また、鼠大根というダイコンの栽培品種があり、根はずん胴で先は急にとがり、長さ25cm、径6cm内外といいますから、こちらは形からの取り合わせでしょうか…。
どちらにしても、鼠の繁殖力は強いですから、子孫繁栄の願いをかけているのかもしれません。

お香の世界でも、干支や御題に因んだ各種お香(匂い袋など)が香老舗では用意されているようです。

下は、香道志野流・幽光斎宗玄家元の和歌が添えられた御題香の練香です。(薫玉堂製)
松が枝の霞の衣払われて のぞめば冨士の今朝の白雪

 

早速、練香の少量を空薫(そらだき)して香りを楽しんだ次第です。
練香特有の良い香りが部屋いっぱいに拡がりました…。

詩歌をちこち 【替千歳香】  

|『拾遺和歌集』巻第五 賀 288
| 亭子院歌合せ   みつね

みちとせになるてふもものことしより 花さく春にあひにけるかな

〔大意〕三千年に一度実が成るという桃が、今年から花が咲くというめでたい春に、ちょうど巡り合ったことだ。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)
※凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
※【三千年香】に同歌。