定家葛の花

テイカカズラ【定家葛】の白い花が公園の道路脇に咲いていました。
樹木に張り付いてよじ登り、葛の茎が垂れ下がっている先端付近に付いていた花です。(2枚目)

テイカカズラの花は初めて見ました。(^O^)

下の写真は別の場所で見た定家葛の花です。

テイカカズラ【定家葛】の名は、藤原定家の霊が式子(しょくし)内親王の墓につると化して絡んだという伝説に由来するようです。

能「定家」の古名は「定家葛」のようですが、『まんがで楽しむ能の名曲七〇番』には以下の解説があります。

「都の千本(上京区)あたり。時雨(しぐれ)にあった旅の僧が雨宿りをしていると、里の女はそこが藤原定家ゆかりの「時雨の亭(ちん)」だと告げる。そして僧らを式子(しょくし)内親王の墓へ案内し、定家と内親王の愛を物語る。その墓にまといついた葛(かずら)は、定家の執心のあらわれ。死後もその執心に悩む女は、救いを僧に求め、墓に消えた。僧は定家葛のからまる墓に向かい弔うと、式子内親王がありし日の姿で現れ、苦しみを訴えるが、読経のおかげで葛がいったんほどけ、喜びの中で舞う。しかし、舞い終えて墓に戻ると、ふたたび定家の葛はまとわりつき、墓をうずめてしまうのだった。」

なんと、なんと…。

ところで、「定家葛」の別名は、まさきのかずら【柾葛】。(季語は秋)

今日、「定家葛」の花を見て、組香「落葉香」の証歌を思い出しました。

『新古今和歌集』巻第六 冬歌 561
(春日社歌合)  藤原雅経

うつりゆく雲に嵐のこゑすなり 散るかまさきのかづらきの山

〔大意〕どんどん流れてゆく雲中に嵐の音がこもって聞えるよ。いま散るのであろうか、まさきのかずらが葛城山で。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

歌の中で、葛は懸詞になっています。[柾(正木)の葛・葛城山]

花が咲けば実が成るのは道理ですが、「定家葛」の果実は長さ15cmの円筒形と辞書にはあります。
これからも折をみて出かけ、果実を確かめたいと思っています。(^^)

※公園にはヤママジサイも咲いていました。