雨百穀を生ず

今日は新月、旧暦の朔日。
今年は昨日まで閏二月であったために、今日からやっと旧暦・弥生三月ということになります。
暮春・晩春の時候となりますが、今日の名古屋の最高気温は27.4℃で早々と夏日です。

この冬から春にかけて、YouTube上で「上高地・河童橋ライブカメラ」と「立山・室堂ライブカメラ」を度々チェックしていました。
上高地の映像を見るたびに感じたことは、「こんなに雪が少ない……」ということでした。
この冬、岳沢が雪ですっぽり埋まっている景色は見られず、これからGWにかけてデブリで埋まる気配も感じられません。
今週から上高地線が開通したからでしょうか、早や観光客で大賑わいの様相を呈しています。

今日は(から)二十四節気の一つ「穀雨」。(黄経30度)
天明七年『暦便覧』には「春雨ふりて百穀を生化すればなり」とあります。
まさに雨百穀を生ず…です。 (^^)

コデマリ【小手毬】の花が満開です。

先日の「香木や香りに関連する慣用句・ことわざ」に触発され、「伽羅」に限定して伽羅を冠する名・慣用句・ことわざを少し調べてみました。

題して、「伽羅にまつわるエトセトラ」

1.『香道一口メモ』から

【伽羅の名①】
きゃらの道とは正しい道(伽羅は沈水香なので、沈を仁にかけていった語)、伽羅の春はめでたい初春ともうるわしい春とも。きゃらを言うはお世辞をいうで、伽羅者はお世辞のうまい人、愛想のよい人。伽羅平(へい)はお世辞で人のきげんをとる者を人名のようにいった語。伽羅多き人は富裕者。伽羅男、伽羅女(め)は美しい男女のこと。

【伽羅の名②】
雲泥の差のある例えを伽羅とさつまいも伽羅と大食きゃらの仏に箔を置く、はよいものをさらによくする意。伽羅枕(まくら)は香木をたく木枕であるが、はなはだしいぜいたくの例えにもいう。きゃら臭いは不相応にみえを張ったり、はでにふるまったりして生意気なこと。上品のびんつけ油を伽羅の油、上等のゲタを伽羅のゲタなどと呼んだ。

2.『故事・俗信 ことわざ大辞典』(小学館)から

【伽羅】香の名。沈香で、香木中でも名香といわれる。

◎伽羅で作った仏(ほとけ)同然(どうぜん)
⦅名香伽羅で作られていても、焚かないとその良さはないところから⦆身は高貴ながら、実際の役に立たない人をいう。

◎伽羅と灸(きゅう)の痂(ふた)
⦅「痂」は、かさぶた⦆一見似ているがまったく違うもののたとえ。

◎伽羅と薩摩芋(さつまいも)
まったくかけはなれて違うもののたとえ。伽羅と灸の痂。月とすっぽん。雲泥の差。

◎伽羅と大食(たいしょく)
⦅上品なものと下品なものとの対比から⦆はなはだしく違うことのたとえ。

◎伽羅の御方(おんかた)
本妻の異称。

◎伽羅の仏(ほとけ)に箔(はく)置(お)く
⦅名木の伽羅で作った仏を、さらに金箔で飾る意から⦆中身の良いものを外見も良くする。良い上にさらに良くする。

◎伽羅も焚(た)かず屁(へ)もこかず
美徳もないかわりに悪いこともしないの意で、平々凡々であることのたとえ。「伽羅も焚かねば屁もひらぬお人よし」などと使う。沈香も焚かず屁もひらず。

◎伽羅を言(い)う
おべんちゃらをいう。お世辞をいう。へつらう。

3.『広辞苑』(岩波書店)から

【伽羅】
1.(梵語tagara多伽羅の略)香木の一種。沈香の最上の種類。黒色で光沢がある。日本では最も珍重された。
2.よいものを賞めていう語。極上。
3.遊郭で金銭の隠語。
4.おせじ。

〇伽羅色…濃い茶色
〇伽羅細工…名木で種々の細工をすること。また、その人。その細工物。
〇伽羅代…江戸時代、遊郭で客から芸娼妓に与えた小遣銭。
〇伽羅の油…鬢(びん)付け油の一種。もと、ろうそくの溶けたものに松脂(まつやに)を混ぜて練り、香りをつけたもの。のちには大白唐蠟・胡麻油・丁子・白檀・竜脳などを原料とした。正保・慶安(1644~1652)の頃、京都室町の髭の久吉が売り始めて広まった。きゃら油。
〇伽羅の御方…本妻の隠語。
〇伽羅の木…キャラボクのこと。
〇伽羅の字…金銀の隠語。
〇伽羅蕗…蕗(ふき)の茎を醤油で伽羅色になるまで煮しめた料理。伽羅煮。
〇伽羅木(ぼく)…イチイ科の常緑針葉低木。イチイの変種。幹は地に臥して直立しない。庭園・生垣に栽植。
〇伽羅枕…ひきだしがあって、その中で香をたくようにした木枕。遊女などが用いた。香枕。
〇伽羅女(め)…美人。美女。
〇伽羅者(もの)…愛想のよい人。世事に巧者な人。

昔も今も、伽羅は珍重され、すこぶる高価な代物のようです。 (^^)

そういえば、歌舞伎の演目に「伽羅先代萩」(めいぼくせんだいはぎ)があります。
また、「助六由縁江戸桜」(すけろくゆかりのえどざくら)の中で、助六が髭の意休に喧嘩をしかける時の互いのセリフの中に、「蚊遣りの代わりに伽羅でもたくか」、「そいつの髭にはシラミがたかる。伽羅はシラミの大禁物(だいきんもつ)」、「伽羅くせぇ」などがあるようです。