『いにしへの香り』
昨日の初夏を思わせる陽気に、藪椿の蕾が一気に膨らみ、一つ二つと咲き始めました。
個人的には、椿といえば何んといっても一重の藪椿です。
樋口百合子『いにしへの香り』(淡交社)をざっと読み終えました。
3月4日の「志野流香道松隠会」の際に、樋口百合子氏の講演「組香と歌枕」に先立って司会者から紹介された本です。
副題「-古典にみる「にほひ」の世界-」の通り、古典の中に匂い・香りがどのように表現されているかを、文献・歌・詩などを引きながら読み解いていくといった内容になっています。
文体は語り口調で、まるで講演会で講師の話を聞いているかのような錯覚さえ覚えるほどです。
それもそのはず、「あとがき」を見ると大学での講義テキストが下地になっているとのこと…。
序文は、志野流香道・蜂谷宗玄家元で「香りが道になるまで」。
以降は、
はじめに 古代日本人の香りへの思い
第一章 「にほふ」と「かをる」
第二章 『古事記』の香り
第三章 『風土記』の香り
第四章 『日本書紀』の香り
第五章 『懐風藻』の香り
第六章 『万葉集』の香り
第七章 『続日本紀』の香り
おわりに (1)『源氏物語』の香りへ、…
という構成になっています。
初めて知る事だらけで、「ふむ、ふむ、…」と読み進めるほかはありませんでしたが、『万葉集』の章で大伴家持の歌と生涯が出てきたときには、2015年の志野流香道全国大会・富山大会の際に訪れた「高志の国 文学館」を思い出しました。(高岡市万葉歴史館には行かなかったのが残念…)
また、万葉集に詠み込まれている花の中で、萩が最多であることはちょっと意外でした。(二番目は梅)
尤も、その道の人、業界人にとっては良く知られている事だそうです。(遠くから声掛けあり!!)
現代の感覚では春の花といえば桜ですが、万葉の時代には桜を詠んだ歌は意外と少なく、花と云えば梅だったのですね…。
もう一度、ゆっくり読み返したいと思っています。