初霜香

今日で10月もお終い。
明日11月1日は、旧暦では九月十三日で、十三夜、後の月、栗名月の日です。

日曜日に台風が通り過ぎ、昨日の名古屋は晴れたものの強風が吹き荒れました。
気象庁は東京・近畿地方で「木枯らし1号」が吹いたと報じましたが、名古屋で「木枯らし1号」が吹いたとは報じられません。

気になって調べてみたところ、なんと「木枯らし1号」には条件がありました。
10月中頃から11月末までの間で、
①西高東低の冬型気圧配置
②北から西北西までの風が8m/s以上
③前日よりも気温が3℃以上降下
上の三条件を満たした場合に、「木枯らし1号」と発表されるようですが、発表は東京と大阪のみです。

名古屋でも、いえいえ日本全国どこでも、木枯らし1号と発表して欲しいものです…。

ところで、二十四節気の「霜降」は、11月7日の「立冬」まで続きます。
名古屋ではまだ初霜は観測されていませんが、昨日から朝の冷え込みは厳しくなっていますから、そのうちに……でしょうか。

この時季に遊ぶ組香の一つに「初霜香」(大外組)があります。

◆香は二種
初霜として 三包で内一包試
白菊として 二包で無試

◆聞き方と答え方
試みの初霜を聞いた後、
初霜、白菊の四包を打ち交ぜ、内二包を取って炷き出します。

初霜・初霜と聞けば
心あてにおらばや折らん初霜の と記紙に書きます
白菊・白菊と聞けば
おきまどわせる白ぎくの花   と記紙に書きます
初霜・白菊と聞けば
をのづから残るも淋し霜枯れの と記紙に書きます
白菊・初霜と聞けば
庭の面に老いの友なる白ぎくは と記紙に書きます

※記録紙で、全あたりの人には、初霜と書かれます

◆証歌
心あてにおらばやおらん初霜のおきまどわせる白菊の花  躬恒(古今和歌集・和漢朗詠集273)
おのづから残るも淋し枯の草葉にまじる白菊の花    師良(新後撰和歌集)
庭の面に老の友なる白菊は六十のやなほかさぬべき   後宇多院(風雅和歌集)

[メモ]
※霜は白髪をたとえていう語ですから、初霜、白菊、白髪の情景を連想しながら遊ぶ組香のようです。
※菊の異称=翁草(おきなぐさ)、齢草(よわいぐさ)、千代見草(ちよみぐさ)、優草・勝草(まさりぐさ)、花の弟(おとと)、など。
※六十=六十路(むそじ)…六十歳

【余談】
「白菊」と云えば、一木三銘の「初音」「白菊」「柴舟」(「蘭(ふじばかま)」を含めて一木四銘とも)を思い出します。森鴎外の短編小説『興津弥五右衛門の遺書』には経緯が興味深く記されています。

公園の「南京ハゼ」です。

香道一口メモ・44【六国(りっこく)②】

ラコクは羅斛(らこく)地方に産する羅斛香のこと。この地はシャムの一部で今のタイ国。スモンダラはスマトラであることはほぼ確実。だがスマトラ全島ではなく同島の東北部にかつて栄えた国の名とか。マナカは古くから西洋で香料諸島として知られているモルッカ諸島との説よりも、マレー半島のマラッカ地方とする方が妥当か。

香道一口メモ・45【六国(りっこく)③】

マナバンはインドのマラバール海岸、ジャワのマラバン地方あるいは南蛮全体を指すとも。サソラに比定できる地名はインドのブーナ地方にあるそうで、また、栴檀(せんだん)木の産出で名高いチモール島との説もある。もっともここに記したインドの諸地は、檀香は産するが沈水香は産出しないそうだから、この地名の信頼度は低い。