「にほふ」と「かをる」

某教室の組香は「夘花香」。
卯の花が咲いてはいるけれど、花は香らないという声を複数耳にしました。

「なんでだろう~、なんでだろう~」

卯の花を直接見た記憶がないので、花の香りがどうなのか、定かではありません。(同じ空木(うつぎ)の仲間である梅花空木は、文字通り梅に似た香りがしています。)

唱歌「夏は来ぬ」で「うの花のにほふ垣根に…」と詠われていることから、卯の花は香りがすると思い込んでいたのですが、辞書を開いてから、どうやらそうではないかもしれないと思い始めています。

「にほふ」で旺文社古語辞典を引くと、
①美しい色に染まる。あざやかに色づく。
②つやつやと美しく映じる。艶麗である。
③美しく光る。明るく照り輝く。
とあり、その次に、
④よい香りがする。咲きほこってよく香る。
とあります。(その他は略)

辞書には、④の例として、「橘のにほへる香かも…(略)」と「(略)…昔の香ににほひける」が挙げてあり、「香」と共に用いているようです。

また、【匂ふ】の語意として、
「色がひときわ美しく人目に立つ意。多く、視覚の面での表現に用い、のち、嗅覚の表現が中心になる。」と説明してあります。
時代の移り変わりと共に、言葉の捉え方が変わってきたことになります。

従って、「うの花がにほふ垣根に…」の【にほふ】は、ひときわ美しく人目に立つように咲いた、という様に捉えれば、卯の花の香りがしなかったとしても、問題はないことになりそうです。

<匂ふ>と<香る>の関係は、単純に<匂ふ=香る>でないことだけは確かなようです。

シラン(紫蘭)の白花が咲いています。