淡路結び・思羽包
机上ののし袋を眺めていて、ふと「淡路結び」・「思羽包」のことを思い出しました。
「思羽包(おもいばつつみ)」は香道具の一つで、組香などで用いる香包をいれる包で、例えば、源氏香では5種×5包=25包から5包を取り分けるのに用いる道具と聞いたことがあります。
「思羽(おもいば)」については、辞書には以下のような説明があります。
「鴛鴦(おしどり)、孔雀(くじゃく)、鴨(かも)、雉(きじ)などの尾の両脇にある銀杏(いちょう)の葉の形をした羽。特に鴛鴦についていうことが多い。」
なるほど、鴛鴦は夫婦や男女の仲むつまじいたとえとして一般に用いられています。
そういえば、「思羽包」の上図の左右の開き部分が、鴛鴦の羽のように半円形になっているのを見たことがあります。
「思羽包」の結びは、左右の紐の先端を引くと、スルスルと解けるような魔法の「結び」になっています。
初めて見た時には、まさにビックリ仰天でした。
日本の花結びは美しいことで知られていますが、その妖しさに花結びの核心を見たような思いでした。
すぐに、花結びの本を調べてみましたが、結び方の手順までなかなか辿り着けませんでした。
ところが、手掛かりは意外な時に、思いもよらぬ場面でやってきました。
今から5年前の、2012年に放送された船越英一郎主演の狩矢警部シリーズTVドラマ「京都舞踊襲名殺人事件」の中で、襲名に当たって箱の紐の両端を引く場面があり、なんと紐はスルスルと綺麗に解けていったのです。
「あっ!」と思ったのも後の祭りで、当然、録画などはしていませんでした。
再放送を期待し、毎週土曜午後の再放送枠をチェックすることほぼ一年、遂に録画することができました。
再生・戻し・一時停止を繰り返して、やっと念願の結び方を理解することができました。
よくよく見れば、「淡路結び」の応用でありました。(労多くして益少なし、の典型?)
*左は上の「思羽包」の結び、右は「京都舞踊襲名殺人事件」の箱紐の結びで、どちらも紐の先端を引くと解けます。両方とも、紐が結んであると云うよりは、紐が抜けるようにと折り畳んであるといった感じです。
なお、「淡路結び」は、婚礼などの祝儀袋の結びとして使われるほか、香典袋など弔事の結びとしても使われています。
尤も、祝儀袋には、水引の「結び切り・淡路結び」と「蝶結び」の使い分けがあり、「結び切り・淡路結び」は結婚のように一度きりの願いを込めて、また「蝶結び」は出産・進学等の複数回の慶事にと、使い分けをしているところもあるようです。
左から、祝儀(淡路結び)、祝儀(蝶結び)、弔事(淡路結び)-淡路結びを引けば、結び切りと同じ-
慶事・弔事の袋と水引に関してのウンチクは、各種HPにお任せしたいと思います。