香道一口メモ・9
秋晴れの気持ちの良い一日でした。
近くの庭から、金木犀の香りが風に乗ってほのかに漂ってきます。
うっとりです。
金木犀の漢名は「丹桂」とか…。
香道一口メモ・9【沈水香②】
中国の本草によれば文字どおり水に入れると沈むところから「沈水・水沈」と命名されている。これをふつう、水に沈む程度により三段階に等級づけし、水底に沈むものを沈香、なかば沈むものを桟香(さんこう)水に浮くものを黄熟香(おうじゅくこう)と付名し、よく沈むものほど良香としている。樹脂の付着度を基準とする分類法である。
してみると、正倉院御物としてその名を知られた蘭奢待は黄熟香とも呼ばれていますから、水に浮くことになります。
蘭奢待は数年前に正倉院展で見たことがありますが、木心は黄色がかっていて、木目は粗く、乾いた感じで、それまで抱いていた伽羅のイメージとは異なった印象を持ちました。
その蘭奢待には、たくさんの切り口がありましたが、付箋が貼ってあるのは僅か三か所で、足利義政、織田信長、明治天皇の三名が切り取った跡ということになっています。(尤も、付箋が貼られたのは明治時代と聞いた覚えがあります。)
私自身は一昨年、上賀茂神社の献香式に参列した後、名香席で薬師寺蘭奢待を聞く機会があり、いたく感動した覚えがあります。
蘭奢待については、畑正高『香三才』(東京書籍)に詳しく、正確に記されています。
なお、志野流香道機関誌『松隠23号』には講演会抄録として、蘭奢待(黄熟香)と紅塵(全桟香)の成分分析の記事があり、興味深い内容になっています。