白檀塗
香道一口メモで「白檀」の名を見て、茶道では風炉の季節に炭手前で用いる香木が、白檀の角割であることを思い出しました。
次いで、脳裏に浮かんできたのは「白檀塗」。
香木の白檀とは、全く関係は無いと言われている塗りとしての「白檀塗」です。
二、三ヶ月ほど前のことでしょうか、名古屋のデパートの食器売り場に「白檀塗」の漆器が並んでいました。
黒と金箔の市松模様に透漆(すきうるし)がかけてあり、金箔の部分が薄く飴色に色づいていて、一味違った見栄えのする豪華なプレートになっていました。
実物の写真が無いのが残念です。
白檀塗については、『原色茶道大辞典』に詳しく説明されています。
「漆工芸の一技法。漆器や陶器の器内に、金泥または金消粉(金箔を貼り付けることもある)を全面的に蒔き、乾燥したところで透漆を薄くかけて乾かす。金泥または粉や箔を用いたものを金白檀、銀を用いたものを銀白檀と呼んでいる。名称の起こりはわからないが香木の白檀と関係ない。平安時代にはじまり、遺品も多い。」
名古屋では、遠州流のお席で炉縁の遠州石畳模様が白檀塗になっているのを見たことがあります。
白檀塗の漆器・木製品は一度見たら、忘れられない美しさです。
陶器の白檀塗は、四年ほど前に愛知県陶磁美術館で「茶人のあそび心 形物香合 番付の世界」展で何点か見ました。
東の大関に君臨する「交趾(こうち)大亀香合」は甲に緑釉がかかり、中央に白檀塗が施されています。
※同展・冊子より(藤田美術館蔵)
因みに、様々な番付が江戸時代には流行していますが、どれもこれも最高位は大関です。
横綱は本来、化粧まわしの上に「横綱」を締めることを許された大関力士の称で、番付上は大関でした。
大関の上の最高位の名として、番付上に横綱の称号が登場するのは明治23年(1890)になってからです。
※番付(部分)
9月も今日でお終い。
朝夕は気温がぐっと下がり、なんだか肌寒くなってきました。
香道一口メモ・15【檀香②】
白檀の産地は広範囲でニュージーランド、オーストラリアほかの熱帯地方にまでおよび、各地で栽培されている。原産地はインド。樹皮は沈水香と同じく香・薬両途に。とくに現代医薬の出現する以前は貴重な薬料品であった。また、虫害を防ぎ彫刻に適しているから材は仏像、木魚、じゅずなどの仏具、それにつえ、扇なども作られていて親しみ深い。