初雁
今日は、二十四節気の一つ「寒露」で、七十二候では「鴻雁来(こうがんきたる)」。
雁が北から飛来し始める頃と云うことですが、朝刊には北海道美唄市の宮島沼に飛来している何万羽というマガンの群れの写真が載っていました。(初飛来は9月15日)
ここで栄養を蓄えたのち、宮城県の伊豆沼などに旅立っていくのだそうです。
雁と云えば、組香では「秋夜香」(外組)でしょうか。
◆証歌…古今和歌集 秋上
白雲にはねうちかはし飛ぶ雁の かずさへみゆる秋の夜の月 (よみ人しらず)
◆香は四種
秋夜として 四包で内一包試
白雲として 三包で無試
雁 として 二包で内一包試
月 として 一包で無試
◆聞き方
先ず試みの、秋夜と雁を聞いた後、
① 秋夜三包と白雲三包の計六包を打ち交ぜて炷き出します。
② 次に、雁一包と月一包を打ち交ぜて炷き出します。
◆記録紙
月、雁の出方によって、また秋夜・白雲の当・不当によって、和歌の上句、下句、一首などが中段に書き添えられます。(詳細略)
◆メモ
・香銘の[秋夜・白雲・雁・月]は全て和歌の中から取ってあります。
・雁(かり)・雁(がん)=カモ科の比較的大形の水鳥の総称。ハクチョウより小さく、カモより大。
※『日本の野鳥』より
・マガン【真雁】…秋、斜めの一直線(さお)やV字形(かぎ)の編隊になって日本に飛来。古くから「かり」として知られています。
・ヒシクイ【鴻・菱食】…ガンの一種でマガンより大。
<余談>
◎百二十種名香の中に、初雁(はつかり)、かりがね(雁金)があります。
◎がんもどき【雁擬】=(雁の肉に味を似せたものの意)油揚げの一種。昔は麩を油で揚げたもの。今はつぶした豆腐とすり下ろしたヤマノイモを混ぜ合わせ、針牛蒡・木耳(きくらげ)などの具を混ぜて丸め、油で揚げたもの。飛竜頭(ひりょうず)。がんも。(『広辞苑』より)
◎がんどり【雁取】=名物。長次郎作黒楽茶碗。利休がこの茶碗を芝山監物に贈ったところ、その返礼に鷹野の雁をもらったので、利休が「思ひきや大鷹よりも上なれややき茶碗めが雁取らんとは」の狂歌を詠んでお礼の文に添えたことから、世に雁取の茶碗と呼ばれるようになった。(『原色茶道大辞典』より部分)
香道一口メモ・23【香類の輸入】
仏教伝来のころから発達した香の使用は天平時代にいっそう増加した。遣唐使や唐僧らにより輸入された大陸の文物と共に沈水香、白檀、麝香(じゃこう)薫陸(くんろく)甘松・丁子・青木・蘇合ほか諸香も多数におよび、正倉院御物の香薬物もこの期の輸入品。とくに黄熟香=蘭奢待(らんじゃたい)、全浅(ぜんせん)香は比類のない香木として保存されている。