野々宮香
昨日の名城市民茶会のお席で「野宮(ののみや)」という言葉を聞いて、古い組香に「野々宮香」(大外組)があることを思い出しました。
源氏物語の「葵」の巻、六条御息所と葵の上の車争いにまつわることを題材にした組香のようです。
◆香は四種
斎院 として 二包で内一包試
斎宮 として 同断
野々宮として 同断
客 として 二包で無試
◆聞き方と答え方
斎院、斎宮、野々宮の試みを聞いた後、
斎院、斎宮、野々宮の三包に客一包を加えた四包を打ち交ぜて、内一包を取り出して、これに残りの客一包を加えた計二包を炷き出します。
香の出方による名目は、
斎院 にウなら 加茂
斎宮 にウなら 御禊
野々宮にウなら 榊
客 にウなら 車争
◆メモ
・野宮(ののみや)=伊勢神宮の斎王(斎宮)の潔斎所で嵯峨野にあった。
・斎院(さいいん)=平安時代、天皇即位の時、賀茂神社に奉仕した未婚の内親王または皇族の女性。
・斎宮(さいぐう)=伊勢神宮に奉仕した未婚の内親王。
・加茂=加茂(賀茂)神社
・御禊(ごけい)=伊勢の斎宮、賀茂の斎院などが、賀茂川の河原で禊を行う儀式。斎宮の御禊は初斎院および野宮(ののみや)に入る前、また斎院の御禊は賀茂祭りの前に行われた。
・榊(さかき)=(栄える木の意)常緑樹の総称。特に神事に用いる木を指す場合が多い。
・車争(くるまあらそい)=祭り見物などのとき、牛車をとめる場所のことが原因で、たがいの従者などが争うこと。源氏物語で加茂祭(葵祭)のおり、葵の上と六条御息所の従者たちが争ったことで名高い。
※客二包が出れば「車争」とありますから、客二包は六条御息所と葵の上のようです。
【余談】源氏物語に疎い私にとっては、「野々宮香」など全く縁遠い存在の組香と思っていましたが、お茶席の炉縁の源氏香之図から「野宮(ののみや)」の話が出てくるとは思ってもみないことでした。加えて、隣に座られた方(鼓をなさる方)が能の曲「野宮」の話をなされたのにはビックリでした。
芸道で精進されている方に、思わぬところでお目に掛かった昨日でした。
茶会から一日たった今も、なぜ炉縁の香図から「野宮(ののみや)」の話に繋がって行ったのか、依然として良く分からないままなのです。
ともあれ、源氏物語で困った時には『絵本 源氏物語』(徳川美術館内売店で販売)を開き、能の関係は『まんがで楽しむ能の名曲七十番』(檜書店)を開くと云った具合で、二つの本は門外漢の私にとってはバイブルとでも呼べる本になっています。
鉢植えの嵯峨菊が咲き出していますが、年々、矮小化しています。
香道一口メモ・52【源氏香②】
名の由来は五種香の有する五、二十五、五十二といった数的なものが「源氏物語」の主要人物数・巻数(五十四)などと相通じることによるようだ。図型には桐壺と夢の浮橋とを除いた帚木から手習までの巻名を配した。その配当の方法は詳しくはわからないが、なによりもぼう大な物語を香の世界で表現させたところに組香としての趣向価値がある。
※源氏香之図は昨日のブログ記事【源氏香①】に追記しました。
※五種類×各五包の計二十五包から任意の五包を取り出すには、ちゃんと決められた方法があるやに聞いています。