立冬・開炉

今日は二十四節気の一つ「立冬」、暦の上では今日から冬ということになります。
尤も、名古屋は最高気温が22℃近くまで上がり、10月中旬のあたたかさとなりました。

茶の湯の世界では、11月の声を聞くと待ちかねていたように風炉から炉へと変える動きが見受けられます。

「炉開き」といえば、独特の響きのある言葉ですが、丸畳を炉畳に代え、炉蓋を開け、炉灰を整え、五徳を据え、炉釜を乗せて五徳の高さを調節し、炉灰を掻き上げるといった作業が必要となり、矢張りひと仕事となります。
加えて、風炉の灰の始末もしておかなくてはなりません。

何事もそうなのでしょうが、下準備は目立ちませんが、実はとても大切なことで、実際にやってみなければ解らないことの一つと云えそうです。
と、如何にもわかったようなことを書いていますが、実際は私がやっているわけではなく、他人から聞いたことを並べただけです。

いつ頃からなのか知りませんが、炉開きは、亥の月、亥の日に行い、亥の子餅を食して子孫繁栄を願ったと云われています。(しかも、亥の子餅は亥の刻に食するとのおまけまでついて…)
表千家では「炉開き」は柚(柚子)の色づく頃と昔から云われていますが、おおよそ立冬の頃を目安にされているようです。

旧暦では、十二支の子・丑・寅・…・戌・亥が、それぞれ十一月・十二月・一月・…・九月・十月に配されていますので、旧暦十月は亥の月となります。
また、旧暦十月の最初の亥の日は、暦によると今年は11月20日です。(旧暦で閏五月があった関係で、ちょっと遅めです)
従って、習いに従うと今年の「炉開き」は11月20日、亥の子餅を食するのも11月20日ということになります。

亥は猪に通じ、猪は多産ですから、亥の子餅を子孫繁栄につなげたのでしょうね。
また、旧暦の十・十一・十二月は「冬」に当たり、亥の十月は陰の気が増し、十一月にあたる所には八卦の坎(かん)[水の卦]が配されていることから、炉に火が入ることによる火災の難を封ずると云った意味合いも込めて、<亥の月・亥の日>がキーワードになったのではないでしょうか。

余談ですが、茶道や香道の灰ごしらえのとき、水の卦である坎を火箸で描く所作があるのは、よく知られているところです。

ともあれ、旧暦で亥の月・亥の日にあたる11月20日まで、まだちょっと日にちがあります。
お菓子屋さんはと言えば、既に11月1日から亥の子餅を販売している所もあれば、11月20日の一日だけ販売する所もありで、実にいろいろです。

勿論、炉を開くのもお菓子屋さんの動きと同じで、実際の日にちはいろいろのようです。

香道一口メモ・53【菖蒲(あやめ)香①】

「源平盛衰記」源頼政の説話によるもの。頼政はヌエ退治の功で、かねて思いを寄せていた菖蒲の前を鳥羽院から賜ることになった。院は菖蒲の前によくにせた女官二人とともに並べて見分けよといわれた。だが頼政は見分けがつかずに困り詠んだのが「五月雨に池のまこもの水増して何れあやめと引きぞわづらふ」この歌を主題に組香された。