留春香

今日4月20日は二十四節気の一つ[穀雨](春雨が降って百穀を潤す意-広辞苑-)で、春の季節中の最後にあたる節気となっています。

この時季、旧暦ではまだ三月で、まさしく春の最後の月ということになります。

去りゆく春を惜しむ心情を詠んだ詩から引いた組香に【留春香】(大外組)があります。

春留不用関城固 花落随風鳥入雲 (尊敬)

◆香は六種

春として 二包で内一包試
関として 同断
花として 同断
風として 同断
雲として 二包で無試
鳥として 一包で無試

◆聞き方・書き方

春・関・花・風の試みを聞いた後、
①先ず、春・関・花・風の四包を打ち交ぜて炷き出します。
②次に、雲二包、鳥一包の計三包を打ち交ぜて炷き出します。(共に無試の香ですが、数で聞き分けます。)

記録紙の奥には、春留不用関城固 花落随風鳥入雲 と記します。

全当りの人には、記録紙の点数の所に[三月尽]と書きます。

◆メモ

春留不用関城固 花落随風鳥入雲 (尊敬)

この詩は、『和漢朗詠集』の[三月尽]の中に収められています。

川口久雄『和漢朗詠集 全訳注』によると以下のようです。

春を留(とど)むるに 関城(くわんせい)の固(かた)めを用(もち)ゐず
花は落ちて風に随(したが)ひ 鳥は雲に入(い)る

〔現代語訳〕春をとどめようとして、関所や城門を設け守りを固めても、何の役にも立ちません。時が来れば花は枝を離れて風のまにまに飛んで行ってしまうし、鳥は雲の中に入って姿を消してしまうのです。

※尊敬(そんぎょう)=橘在列(たちばなのありつら)の法名

※三月尽(さんがつじん)・弥生尽(やよいじん)=陰暦で三月の終わる日。春の晦日。

※花筏

※花筏の花

花をのせた葉を筏にたとえての名だそうです。