玄猪包香合

亥の子餅(玄猪餅)がらみのお話です。

江戸時代初期の仁清(にんせい)の作に「玄猪包(げんちょつつみ)香合」があります。
大きさは約10cm四方、高さ(厚さ)は約2cmです。

※『茶道美術全集7 香合』より。

旧暦十月(亥の月)の亥の日に、宮中では亥の子餅(玄猪餅)がつかれて臣下・女官に下賜されましたが、それを包んだ紙(畳紙)は「玄猪包」と云われました。

この香合はその形を写したものとなっています。
白釉を一面に掛け、色水引を四方から十文字に結び合わせた間に銀杏の葉一枚を青釉で差し挟んで、雅な包をあらわした香合です。
現在でも、秋の茶道具カタログには、仁清の写しが必ずと云っていいほど掲載されている定番の香合(こうごう)となっています。

——-♪

ところで、『家庭画報』11月号に「玄猪(げんちょ)包」に見立てたお料理の写真が載っていました。

見立てのポイントは、和紙で包んだ料理の紅白紐結びと、添えられた黄緑色の銀杏の葉でしょうか。
包の中は玄猪餅ではなく、松茸と白甘鯛の幽庵焼きになっていますが、京料理の雅な雰囲気を醸し出しています。

——-♪

亥の子餅(玄猪餅)を包んだ「玄猪包」の正式な折り方・包み方はいずれまたアップしたいと思っています。

玄猪包を現代風に使うとすれば、例えば、香木を包む、プチプレゼントを包む、といった使い方もありそうです…。

※伝承されている「玄猪包」の表側です。(『包結図説』より)