亥の子餅・玄猪餅

今日11月15日は、旧暦では十月八日になっています。

旧暦十月は亥(い)の月。
そして、今日は亥の月で最初の亥の日。

亥の子と云えば、旧暦十月の亥の日のことです。
この日には、新穀でついた餅を食べて祝う「亥の子の祝い」「御玄猪」が平安時代から宮中では行なわれていました。
この餅は「亥の子餅」「玄猪(げんちょ)餅」と呼ばれ、宮中では餅を畳紙で「玄猪包」にして臣下・女官に下賜されていました。
やがて民間にも広まり、民間でも収穫を祝って餅をついて食べるようになったといいます。

亥は猪(いのしし)に通じ、猪が多産であることにあやかって「亥の子の祝い」で「亥の子餅」を食べて、子孫繁栄と無病息災を願ったようです。(しかも、亥の刻に食べると云う念の入れようです。)
亥の子餅(玄猪餅)は、古くは七種の粉(大豆・小豆・大角豆(ささげ)・胡麻・栗・柿・糖)を混ぜて猪の子形に作られたようです。
現在でも菓子舗では、亥の子(猪の子)に見立てたお菓子・亥の子餅が販売されています。


※写真の「亥の子餅」は、今日(亥の日)一日だけ販売される菓子舗「たねや」の亥の子餅です。「たねや」さんに感謝!!

亥は、陰陽五行説では木・火・土・金・水の内の水性にあたり、火災の難を鎮め逃れるとされたことから、江戸時代にはこの日(亥の月・亥の日)に囲炉裏や炬燵(こたつ)を開く風習ができたといいます。

※図は旧暦。旧暦十月は亥の月で水性。

茶の湯においても、この日を炉開きの日とし、茶席のお菓子は「亥の子餅」を用いたと云います。
尤も、何時の頃からか前倒しになり、立冬を目安に、更にはカレンダーが11月になる頃にと、早め早めに炉開きをすることも多くなっているようです。

今日は旧暦の十月八日で、亥の月、最初の亥の日となっていますから、本来は今日が炉開き?
実は、炉は一週間前に開いていて、亥の日の今日は“おまじない”として菓子舗「たねや」の「亥の子餅」を食したのでした。(^O^)


※一粒栗を半粒餡で、更に求肥で包んだお菓子。シナモンの香りが効いている美味しいお菓子でした。

「亥の子餅」で一つ思い出したことがあります。
香道の組香「源氏三習香」に出てくる香種「子のこの餅」のことです。

以前、blogに記しましたので詳細は略しますが、源氏物語の中で[亥の子餅][三つが一つ]が[子の子餅][三日夜の餅]に転ずるという「葵の巻」のお話です。
「三が一香」や「源氏三習香」は、背景を踏まえると一層味わい深い組香と云えそうです。
なお、志野流香道の組香にあるのは「源氏三習香」です。

「亥の子餅」の一日でした。