豊国神社月釜12月(2019)

今年最後の名古屋・豊国神社の12月月釜に行ってきました。
席主さんは、桐蔭席が表千家・可知勝氏、記念館が茶道具商ながさか・中沢正人氏でした。
12月の寒さを考慮してでしょうか、いつもの茶室・豊頌軒ではなくて、今日は記念館の広間席が使われていました。

桐蔭席の床に掛けられていたのは、清水寺前貫主・松本大圓筆の大書二行。
随處作主
立處皆真
<随処(ずいしょ)に主(しゅ)と作(な)れば、立処(りっしょ)皆(みな)真(しん)なり>

いかなる環境にあっても、そこに自己の主体が覚醒していれば、到るところ皆真実の世界であり、とらわれやこだわりなどの余計な妄念を切り捨てれば、自由自在な心の働きが活発に動き出す、といった意味のようです。(『茶席の禅語大辞典』より)

いつものことながら、禅語の意味するところは良く解りません…。(簡単に解るようなら修業は不要!との声が聞こえました。)

記念館席は珍しい道具の取り合わせで、しっかり楽しませていただきました。
花入は半枯れの尺八、釜は夜学釜、水指は備前大壺、火入は黒の達磨形など、楽しい取り合わせでした。
更に、お菓子盆として玄々斎好みの遠山盆が使われ、両口屋是清の雪餅と白いメレンゲ、柊(ひいらぎ)の花付きの小枝が添えられ、見事な景色となっていました。(アイディア頂戴です!!!)

夜学釜は、ネット上で検索すれば見ることができます。
本歌は相国寺にもあったと記憶していますが、当代の大西清右衛門が復元する様子が数年前にNHKの茶の湯番組でオンエアされたような覚えがあります。

今日は、十二月にしては暖かい一日でした。
お茶会から帰宅して見ると、朝方はまだまだたくさん付いていた紅葉の葉が、今日一日ですっかり落ちていました。
紅葉の樹も冬支度です。

ところで、明後日の金曜日(20日)のNHKBS3(プレミアム)「美の壺」のタイトルは「悠久なる器~青磁~」(19:30~20:00)。
〔出演者〕
茶道:裏千家・小澤宗誠氏
香道:志野流・蜂谷宗玄家元、蜂谷宗苾若宗匠
作家:塚本満氏、伊藤秀人氏

予告編では、筋目が綺麗に入れられた青磁香炉で、家元が香を聞く姿が映し出されていました。(^O^)

詩歌をちこち 【鳥跡香】           

|①『古来風体抄』巻上 4
|      王仁
難波津に咲くやこの花冬ごもり 今は春べと咲くやこの花

|②『古来風体抄』巻上 6
|      采女
安摘(積)山影さえ見ゆる山の井の 浅くは人を思ふものかは

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
※王仁(わに)
※采女(うねめ)

=======

|※『古今和歌集』仮名序
|     (王仁)
難波津に咲くやこの花冬籠り 今は春べと咲くやこの花
〔大意〕難波津で咲いている木の花よ、長く冬ごもりして、今は春だと、あれ、あんなに咲いている木の花よ。

|※『万葉集』巻十六 3807(②の本歌)
   (采女)
安積山影さえ見ゆる山の井の 浅き心を我が思はなくに
〔大意〕安積山、山影まで見える山の井の水のように、浅い心で私はあなたを思わないことです。
安積香山(あさかやま) 影副所見(かげさえみゆる) 山井之(やまのゐの) 浅心乎(あきさこころを) 吾念莫国(われおもはなくに)

*和歌・大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)