立冬2020

今日は二十四節気の一つ「立冬」。
暦の上では文字通り冬となります。
江戸時代の『暦便覧』には「冬の気立ちはじめていよいよ冷ゆれば也」とあります。

大坂と東京では既に「木枯らし一号」の発表がありました。
冬型の気圧配置(西高東低)で、西北寄り8m/s以上の風が吹き、前日より気温が3℃下がった時に「木枯らし一号」となるようですが、発表は東京と大阪に限られています。

このところ、公園の欅が黄赤色の色づいた葉をしきりに落としていますし、今日のように灰色の雲と共に時雨もやってきそうです。
千両や南天の実が赤く色づいています。
今日はシジュウカラ【四十雀】が庭木にやってきました。
初冬の風景です。

※センリョウ【千両】

コロナ禍ではありますが、香道教室も様々な感染対策をとりながら徐々に再開されているようです。
3月からお休みでしたから、いやはや長い「巣ごもり」でした。

初冬の時季の組香といえば、思い浮かぶのは「初冬香」や「時雨香」あたりでしょうか…。

「初冬香」は香三種[嵐・雲・客]で出香五炷のうちの嵐と雲の出方、即ち嵐が多く出るのか、雲が多く出るのか、或いは二炷づつ同数の場合にはどちらが先に出たかで、それぞれ名目が与えられる組香となっています。
嵐が多ければ落葉、雲が多ければ時雨、嵐雲二炷ずつで嵐先に出れば木葉雨、また雲が先に出れば村時雨というように、初冬の情景がパッと浮かんでくるような名目になっています。

さらに点数の処に、全当りの人には初冬、無当の人には小春と書かれるのも素晴らしく、とてもよく練られている組香だと思います。
なお、小春日和という言葉があるように、旧暦十月(神無月)は初冬らしからぬ暖かい日もあるため小春とも呼ばれています。
先人の豊かな遊び心、季節を愛でる深い眼差し、自然に対する畏敬の念が伝わってくるようです…。(^^)

「時雨香」は同名異組二つの組香がありますが、証歌はどちらも同じです。

木の葉散る宿は聞き分くかたそなき 時雨する夜も時雨せぬ夜も

|『後拾遺和歌集』第六冬 382
| 落葉如雨といふ心をよめる  源頼実
このはちるやどはききわくことぞなき しぐれするよもしぐれせぬよも
【大意】木の葉が散る家では聞き分けることができないことだ。時雨が降る夜とも、時雨が降らない夜とも。
※和歌出典『新編国歌大鑑』(角川書店)/大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

こちらも、とても味わい深い組香です。

ところで、写真のセンリョウ【千両】のように、両が付いた植物は【一両】から【万両】まで見事に揃っていて、どれも赤い実をつけることで知られています。
【一両】=アリドオシ
【十両】=ヤブコウジ
【百両】=カラタチバナ
【千両】
【万両】

さらに、赤い実ついでに?【億両】まで創ろうという話もあるとか、ないとか…。
【億両】=ミヤマシキミ

お気に入りはセンリョウ【千両】とマンリョウ【万両】ですが、華やかさで選ぶなら矢張り【千両】でしょうか…。