七十二候「玄鳥去」

今日は七十二候「玄鳥去」(つばめさる)。
文字通り「つばめが南へ去って行く」の意ですが、実際にこの目で確かめたことはありません。(^^)
しばらく燕は見ていないのです。

そういえば、毎年8月末に昼神温泉でテニス合宿をしていた頃、宿の露天風呂につかりながら、遠くの高圧送電線に鳥がたくさん止まっているのを眺めて、夏の終わりを実感した思い出があります。
あれは、燕?

ところで、香道の組香「重陽香」に引かれている漢詩の中に「燕」と「社日」の語があります。

燕知社日辞巣去 燕(えん)は社日(しゃじつ)を知って巣を辞して去(い)んぬ
菊為重陽冒雨開 菊は重陽(ちょうよう)の為に雨を冒して開く

皇甫冉(こうほぜん)「秋日東郊作」にある句です。

「社日さん」という言葉は、どこかで聞いた覚えはありますが馴染みがありません。
『日本国語大辞典』には、次のように説明されています。

「(「社」は、中国でいう土地の神、産土(うぶすな)の神)春分と秋分に最も近い、その前後の戊(つちのえ)の日のこと。春の場合を春社、秋の場合を秋社といい、土地神をまつって、春には豊作を祈り、秋には収穫を感謝する。しゃじつ。」

今年の「社日」は、暦を見ると9月27日です。
日本では、この日は田畑の仕事を禁じて地神講を営む例が多いと辞書にはありますが、どうなのでしょうか…。

戊(つちのえ)は十干(じっかん)の一つ。
万物の根源を[木・火・土・金・水]におく五行説と陰陽説が結び付いた陰陽五行説では、木(甲乙)・火(丙丁)・土(戊己)・金(庚辛)・水(壬癸)のように、二つずつ五行に配当され、その二つは、陽すなわわち兄(え)と、陰すなわち弟(と)を示すとされ、「戊」は「土の兄(つちのえ)」ということになります。

秋の社日は土地の神を祀る日ですから、秋分の日に近い戊(つちのえ)の日というのは十分納得です。

因みに、十干は次の通りです。
甲(コウ・きのえ)
乙(オツ・きのと)
丙(ヘイ・ひのえ)
丁(テイ・ひのと)
戊(ボ・つちのえ)
己(キ・つちのと)
庚(コウ・かのえ)
辛(シン・かのと)
壬(ジン・みずのえ)
癸(キ・みずのと)

台風14号は瀬戸内から四国を通り紀伊半島を横断し、東海の南海上を東へと進んでいきました。
暴風雨を警戒して、準備よろしく身構えていたのですが、全くの空振りでした。
得てしてそういうものかもしれません…。

庭のミヤギノハギ【宮城野萩】が遅ればせながらやっと咲き始めました。(^^)

なお、宮城野は古くは秋草、特に萩の名所として知られていたようです。

※『日本風俗名所図会1』(角川書店)「東国名勝志」より

宮城野 この野辺の萩、錦を乱せしごとく見事なりしに、いにしへ都にはかってなく、めづらしくや有りけん、為仲卿長櫃に入れ帰り給ふとなり。今は広野に小松原生ひつづきて、その花のいろとしもなく名のみのこりたり
哀れなるみやぎが原のたび寝かな片敷く袖にうづらなくなり
みさぶらひみかさとまうせ宮城野の木のした露は雨にまされり