大雪・玄冬香

一年締めくくりの十二月・師走になって早や一週間。
カレンダーの残りの日付を見ながら、あれもこれもといろいろ思案する日々となっています。

今日は(から)二十四節気の一つ「大雪(たいせつ)」。
大雪と云われても、東海地方の平野部では縁遠い言葉ですが、北国や中部山岳の峰々では積雪の時季となっています。
スキー場も処によっては一部オープンしているようです。(^^)

このところ、新型コロナ新規感染者は全国的に減少し、愛知県でも概ね一桁にまで減少しています。
このまま収まってくれることを願うばかりですが、最近になって新たなオミクロン株の感染が心配されています。
どうやら、これまで通りの対策(三密回避、マスク着用、手指消毒など)をとり続けるしかないようです…。

感染者の減少を受けて、名古屋では大寄せの月次茶会が感染対策をとりながら再開されています。
本当に喜ばしいことです。
尤も、コロナ禍の影響が残っているのでしょうか、私自身の参席は幾分?選択的になったように感じています。(^^)

志野流香道の先代家元・蜂谷幽求斎宗由宗匠が月刊誌に寄稿されていた「香道の心得ー師走ー」の中に、この頃行なう組香として、冬月香・冬夜香・玄冬香・雪見香・歳暮香などが挙げてありました。

締めくくりの「師走」に欠かせない定番中の定番と云えばやはり組香「歳暮香」。
香四種[年・月・日・客]、出香は一結び三包の計十二炷、聞きの名目に様々な歳暮のあり方を配して、しみじみ一年を振り返る組香となっています。
近いところでは、2018.12.08、2020.12.11に組香の概要や名目について触れた覚えがあります。
毎年、必ずと言っていいほどこの時季に行なわれるもので、この組香の名を聞くと年の瀬を感じてしまいます。

「歳暮香」の他、「冬月香」、「冬夜香」、「雪見香」の詳細については、『香道の作法と組香』(雄山閣)が参考になります。

【玄冬香】
げんとう【玄冬】は冬の異称となっています。
玄は黒の意、冬は五行説で黒色にあたるところから、と辞書にはあります。

◆香四種
氷として 二包で内一包試
雪として 同断
寒水として 三包で無試
寒林として 同断

◆聞き方
試みの香を終え、先ず寒水三包に氷一包を入れて四包打ち交ぜ、二包づつ結び合わせます。又、寒林三包に雪一包入れて四包打ち交ぜ、二包づつ結び合わせます。
都合四結び八包を結んだまま打ち交ぜ、一結びづつ炷き出します。
寒水・寒林は無試ですが、氷・雪が有試で各一包であることから、すべて正聞きとなります。

聞きに応じて、名目が聞きの中段に書かれます。
氷を聞き当てたら 聞無浪
雪を聞きあてたら 見有花

氷を聞き損じたら 聞有浪
雪を聞き損じたら 見無花
また、星を付けて一点減点となります。

全の人には、臘月独興と書きます。

この組香は『菅家文草』(900頃)「臘月独興」の誌句の意をもって組む処とあります。
『和漢朗詠集』384の句です。

氷封水面聞無浪 雪點林頭見有花

氷水面に封(ほう)じて聞くに浪(なみ)なし
雪林頭(りんとう)に点じて見るに花あり

〔現代語訳〕氷は池の水面にかたく張りつめて、耳をすませても波の音は聞こえません。雪は林の木々のこずえにふりつもって、まるで花が咲いたように見えます。(出典:川口久雄『和漢朗詠集』)

◆記録
| 林 水 水 林
|  林 氷 水 雪
名 林 水 水 林  聞無浪
|  林 氷 水 雪 見有花 臘月独興
名 林 林 水 水
|  林 雪 水 氷     二

◆メモ
臘月は旧暦十二月の異称です。