『源氏物語』六条院

ネット上のWikipediaに志野流香道の組香目録が載っています。
内十組、三十組、四十組、五十組、外組、外盤物十組の夫々に収められている組香の総数は二百数十種。

ちょっとした興味から、『源氏物語』に関係していると思われる組香を調べてみました。
『源氏物語』の巻名、人物、和歌などが、組香名や香名、そして名目・証歌などに引かれていると思われる組香です。
調べた範囲内では、以下の組香が該当しそうです…。

源氏香・忍香・宇治香・四節香・篝火香・野分香・源氏京極四町香・乙女香・空蝉香・松風香・小蝶香・鈴虫香・源氏三習香・空蝉香・源氏舞楽香。

これらの内、光源氏が建てた広大な邸宅「六条院」の各住人が香名に引かれている組香は、四節香・源氏京極四町香・小蝶香の三組でしょうか…。(名目や札銘に登場する組香は他にもありますが…)

ことさら六条院を取り上げたのは、以前、組香「小蝶香」に参席したことがきっかけとなって、六条院に興味を抱いたからです。

『源氏物語』の六条院については、京都・風俗博物館のHPにある「六條院拝見」に詳しい解説がなされています。
その冒頭部分を引用します。
「六條院は、政治家としての権力と地歩を固めていく光源氏が造営した大邸宅である。源氏三十四歳の秋に着工し、三十五歳の八月に落成した。この邸宅は、六条京極(きょうごく)辺りに四町を占め、六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)の旧邸を西南の一郭に含み計画されたものであった。その敷地は約二百五十二メートル四方、総面積六万三千五百平方メートルである。この広大な邸を四町に区切り、春夏秋冬に配した各町に、四季を楽しめる庭と建物が工夫されていた。」

そして、春夏秋冬に配した各町に、源氏はゆかりのある女性を住まわせています。
即ち、東南(辰巳)の春の町には源氏と紫上(後に女三宮が同居)、東北(丑寅)の夏の町には花散里、西南(未申)の秋の町には秋好中宮、そして西北(戌亥)の冬の町には明石上となっています。

光源氏を取り巻く複雑な人間関係(特に女性関係)は、追って行くのがとても大変です…。(^^)

下は、中部大学・池浩二教授による「『源氏物語』の住まい」に記載されている『源氏物語』六條院の想定平面図です。
出典:『源氏物語 六條院の生活』(光琳社出版)

また、池研究室による六條院の全景模型図です。
出典:『最新国語便覧』(浜島書店)

こうした想定平面図・模型図を眺めていると、物語の中から大邸宅が飛び出してきて、あたかも実在していたかのような錯覚さえ覚えてしまいます。
余りにもリアルで、すっかりその気になってしまうからです。(^^)

六条院を舞台にした三つの組香について、『源氏物語』との関わりは以下のようです。

「四節香」…香九種の中に[紫上・花散里・秋好中宮・明石上・源氏]
「源氏京極四町香」…香五種の中に[紫上・女三宮・花散里・明石・源氏]
「小蝶香」…香四種の中に[紫上・秋好中宮]、そして和歌二首

地植えのエビネ数種が今を盛りと咲いています。
今日は、小鼓の胴に受けを入れて床に飾りました。