林鐘

今日の名古屋の最高気温は37.5℃、三日連続の猛暑日です。
熱中症にならないように、「涼快」モードで体力温存です。(^^)

暦を見ると、今日6月29日は旧暦六月一日となっています。(お月様は新月です!)
旧暦六月の異称として最もポピュラーなのは「水無月」。
読みの「な」は「ない」の意として「無」の字があてられていますが、本来は「の」の意で「水の月」の意とする説もあるとか…。

旧暦の明治五年十二月三日にあたる日を、明治6年1月1日とする新暦・グレゴリオ暦への改暦に伴って、月の名称や節供の日付をそのまま新暦へスライドさせたため、新暦6月も「水無月」と呼ぶように、新暦・旧暦を使い分けしているというか、器用に共使いをしています。(^^)

旧暦六月の異称としては「林鐘(りんしょう)」もよく耳にするところです。
先日23日の城山八幡宮洗心茶会の志野流席では、先代家元・幽求斎宗由作として銘「林鐘」の茶杓が展観されていました。

「林鐘」を辞書で引くと、『日本国語大辞典』には次のような説明があります。
①中国音楽で、十二律の一つ。基音の黄鐘(こうしょう)からはじまって、八番目の音。日本の十二律の黄鐘(おうしき)に当たる。
②陰暦六月の異称。<季・夏>

十二律は、中国・日本などの音楽で、半音ずつ隔てる12音を以て1オクターブの音列を形成する音律のことで、その基音を中国では黄鐘(こうしょう)、日本の雅楽では壱越(いちこつ)といい、長さ九寸の律管が発する音とされたのだそうです。

[中国]では、    [日本]では、
黄鐘(こうしょう)  壱越(いちこつ)
大呂(たいりょ)   断金(たんぎん)
大簇(たいそう)   平調(ひょうじょう)
夾鐘(きょうしょう) 勝絶(しょうせつ)
姑洗(こせん)    下無(しもむ)
仲呂(ちゅうりょ)  双調(そうじょう)
蕤賓(すいひん)   鳧鐘(ふしょう)
林鐘(りんしょう)  黄鐘(おうしき)
夷則(いそく)    鸞鏡(らんけい)
南呂(なんりょ)   盤渉(ばんしき)
無射(ぶえき)    神仙(しんせん)
応鐘(おうしょう)  上無(かみむ)

音の高さの関係はさておき、「林鐘」は八番目の音でありながら、旧暦六月の異称として用いられています。
実は、旧暦の月は、冬至を含む月を必ず十一月として数え始め、以降十二月、一月、二月、三月、四月、五月、六月、…となっています。
これからわかる通り、月を数え始めて八番目が六月となるので、八番目の音「林鐘」は六月の異称となっています。
因みに、旧暦十一月の異称は…、勿論「黄鐘(こうしょう)」ということになります。(^^)

太陽の運行に基づく二十四節気の「冬至」、陰が窮まって陽にかえる一陽来復の「冬至」を含む月が、旧暦(陰暦)では必ず十一月とされています。(旧暦十一月一日が「冬至」となる「朔旦冬至」については別の機会に…)

十二支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)で月を表す場合でも、旧暦十一月は「子(ね)」の月となっているように、旧暦十一月はある意味、月の基準とも云えそうです…。

※月は旧暦!

茶杓の銘「林鐘」は、味わい深い銘となっています。

そういえば、香道でも二百種名香に「林鐘」がありました…。(^^)

s❖

ところで、旧暦六月一日は「氷室の節供」とか…。
習いに従って、氷室の氷はどこぞに届けられたのでしょうか?

香道の組香に【氷室香】があります。
香は五種[冬の名残・消(け)ぬ氷・杉の下風・千年の夏・ウ]、出香七包で千年の夏とウの出により「松ケ崎」と「つけの」が名目となり、記録紙には歌も書かれれます。

志野流香道先代家元・蜂谷幽求斎宗由宗匠が書かれた「香道の心得-葉月-」には、氷室の地「松ヶ崎・つげの」についての考証が記されています。

以前、2018.7.31付のブログ【氷室香】で記事にしたところです。(^^)