誰か袖

雨模様の日が続いています。
先日19日は二十四節気の「雨水」でした。(黄経330度)
天明七年『暦便覧』に「陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となればなり」とある通りです。

18日、名古屋・豊国神社月次茶会で目にした染付の「誰が袖香合」は、期せずして一期一会の出会いとなりました。
「誰が袖香合」は安政二年(1855)の「形物香合一覧」番付上で西方五段目22番に載っている香合です。
2013年に愛知県陶磁資料館35周年記念特別展「形物香合番付の世界」には出品されていませんでしたが、片袖形のそれはネット上にいくつか写真が載っています。

「誰袖(たがそで)」は『日本国語大辞典』によると、「古今-春上」の「色よりも香こそあはれと思ほゆれ誰が袖ふれし宿の梅ぞも」の歌からとして、「匂袋(においぶくろ)の名。衣服の袖の形に作った袋二つを紐でつなぎ、袂(たもと)落しのようにして持ったもの。」とあります。
また、「桃山時代から江戸時代にかけて流行した、さまざまな豪華な婦人の衣桁(いこう)にかけた図。装飾的な屏風絵などに用いた。」とあります。

※『日本国語大辞典』にある図(「用捨箱」(柳亭種彦著)所収図)

『原色茶道大辞典』(淡交社)には、袖の部分を文様・形状の意匠に採り入れた茶道具が茶碗、水指などにあるとした上で、御菩薩焼誰袖茶碗の写真が載っています。

棗としては、宗哲の即中斎好「誰か袖棗」春秋一双がかって話題になった記憶があります。

※表千家茶道美術展図録より

棚には、天板が片袖形の裏千家淡々斎好「誰ケ袖棚」があります。
流石は裏千家、ネット上には写しの棚がたくさん紹介されています。 (^^)

香木では、後水尾院による勅命香「誰か袖」が『香銘大鑑』恋の部に載っています。
「匂い袋の名。衣服の袖の形に作った袋二つを紐でつなぎ袂落しのようにして持ったもの。引歌は『玉吟集』中春・行路梅「誰袖のゆきゝもわかじ玉ほこのみちて匂へる梅の下風」家隆」との解説がなされています。

誰が袖…、なんと趣のある言葉でしょう…。
袖にまつわる香銘は、「袖のうつりか」「袖の追風」「袖の香」「袖の露」「袖の名残」「袖の匂」「袖の別れ」などなど、情景を色濃く想像させる香銘となっているようです。

一度はつぶやいてみたい…、とかなんとかいっちゃって。 (^^)

福寿草が花開いています。