乙女、それとも少女
今日は(から)二十四節気の「処暑」。(黄経150度)
広辞苑によると(暑さがおさまる意)とか…。
天明七年『暦便覧』によると「陽気とどまりて、初めて退きやまんとすればなり」とあります。
今日の名古屋の最高気温は36.0℃の猛暑日、これで今夏の猛暑日は37日目となり観測史上最多になったとか…。
まだまだ暑さは続きますが、それでも朝夕の風に秋の気配が微かに感じられるようになったのでしょうか…。(^^)
でもでも、暑すぎます。
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着物や帯、茶道具の棚や棗など、様々な分野に用いられているのが「源氏香の図」全52図。
『源氏物語』巻21「をとめ」の香の図は下のようになっています。
※五炷のうち、三炷目と五炷目が同じ香り、一、二、四炷目はそれぞれ異なる香りの意。
この「をとめ」の漢字表記について、辞書・書籍などを見ると「乙女」と「少女」の二つがあるようです。
電子辞書で「源氏香」と入力し、表示される巻名一覧を眺めてみると、「をとめ」に該当する箇所の漢字は辞書によって異なっています。
『日本国語大辞典』では「乙女」、『広辞苑』では「少女(おとめ)」、旺文社古語辞典では「少女(おとめ)」。
辞書を作るにあたって拠り所とした「底本」が、あるいは学者・執筆者の意向が、漢字表記に違いを生んでいるのかもしれません。
出典が明記されている書籍をいくつか調べてみました。
以下は、巻名「をとめ」の由来となっている源氏と夕霧の歌の部分です。
◎宮内庁書陵部蔵の青表紙証本『源氏物語』を原形のまま写真複製した『源氏物語 乙女』(新典社)では、
題名「をとめ」
源氏:お(於の変体仮名)とめこも神さひぬらんあまつ袖ふるき世のともよはひへぬれは
夕霧:日かけにもしるかりけめやをとめこかあまのは袖にかけし心は
◎三条西実隆筆の青表紙証本を底本(三条西家証本の親本)とした日本古典文学大系『源氏物語』(岩波書店)では、
目次「乙女」/題名「をとめ」
源氏:をとめごも神さびぬらん天(あま)つ袖ふるき世のともよはひ經ぬれば
夕霧:日かげにもしるかりけめや乙女子(おとめご)があまの羽袖にかけし心は
◎青表紙本系の「首書源氏物語」(寛永十三年刊)を底本とした『源氏物語』(桜楓社)では、
目次「少女」/題名「少女」
源氏:少女子(をとめこ)も神さびぬらし天津袖ふるき世の友齢(よはひ)經ぬれば
夕霧:日蔭(かげ)にもしるかりけめや少女子が天(あま)の羽(は)袖にかけし心は
また、百人一首にも僧正遍昭が「をとめ」を詠んだ歌があります。
◎日本古典文学大系『古今和歌集』(岩波書店)巻第十七 雑歌上 872
五節のまひひめをみてよめる よしみねのむねさだ(良岑宗貞=僧正遍昭)
あまつかぜ雲のかよひぢ吹きとぢよ をとめのすがたしばしとゞめん
香道関係の書籍をいくつか見てみました。
志野流香道機関誌『松隠』5号に載っている「源氏香の図」では「乙女」。
『香道への招待』(淡交社)に載っている「源氏香絵図五十四帖」(宝鏡寺門跡所蔵)では「乙女」。
谷川ちぐさ著『香道を楽しむための組香入門』(淡交社)にある「源氏香の図」では「少女」。
荻須昭大著『香の本』(雄山閣)にある「源氏香図」では「少女」。
「乙女」と「少女」は、用いた底本によって、あるいは書写された「聞書」によって異なっているのかもしれません。
私が見た「聞書」の写しでは、源氏香図は「乙女」、そして組香は「乙女香」となっていましたが…。 (^^)
(注)「をとめ」と「おとめ」、漢字表記の「少女」と「乙女」がいつの時代にどのようにクロスしていったのか、不確かな部分は残っていますが、深入りはしないことにしました。 (^^)
公園では、秋の七草のオミナエシ【女郎花】が咲いています。
早いのか、遅いのか、ちょうど今頃なのか、あまりの暑さに頭がボ~として判断しかねております。 (^^)