呑舟魚不遊支流

5月17日、名古屋豊国神社では献茶式が催され、志野流21世家元・蜂谷一枝軒宗苾宗匠がご奉仕されたようです。
今年の3月18日に銀閣寺で家元継承式が執り行われ代替わりしたことは、以前当ブログでも記事にしたところです。

志野流のお席に掛けられていたのは、一枝軒宗苾家元がかって修行された松源院・泉田玉堂老師筆の一行でした。
呑舟魚不遊支流〔呑舟(どんしゅう)の魚は支流に遊ばず〕
「舟を吞むほどの大きな魚は支流のような小さな川では遊ばない。転じて大物は小さな事にはこだわらないということ。」(『茶席の禅語大辞典』より)

老師から新家元に贈る言葉として、時宜に相応しく、これに優る言葉はないように感じます。
一方で「言うは易く行なうは難し」の文言が頭の片隅をよぎっていったこともいなめません…。 (^^)

※中村公園の藤棚

もう一席の席主さんは、裏千家の庄司宗文氏。
長板総飾りの趣向は大寄せ茶会では珍しく、懐かしくお点前を拝見した次第です。
一際、目を引いたのが床の大きな大きな一重切の花入。
会記には「村瀬玄中作一重切 銘獅子」とあり、まさに銘通りの一品でした。

一重切に入れられていたのは、菖蒲(しょうぶ)と花菖蒲(はなしょうぶ)。
端午の節供で邪気払い・菖蒲湯等に用いられるサトイモ科の菖蒲(しょうぶ)の小花が密集した花穂は始めて見ました。
写真では見たことがありますが、実物にお目に掛かれるとは、ありがたいことでした。
サトイモ科の菖蒲とアヤメ科の花菖蒲の取り合わせは、如何にも席主さんならではの遊び心と感服した次第です。

花菖蒲は二株入っていましたから、内一株は菖蒲(あやめ)にしたらさらに……と一瞬思いもしましたが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」の言葉通り、嫌味のそしりは免れようがなく、一歩手前に控えるのが「粋」と思い直しました。

朝方は強い雨が降ったようで、雨中での道具の搬入はとても大変だったようです。
両席を担当された方々に感謝しつつ、茶席を後にしました。

今日は「太閤祭り」とあって、境内では特設舞台での鈴と太鼓が祭りに華を添えていました。

外組28番【冬夜香】

香四種
一として 三包に認無試
二として 右同断
三として 右同断
客として 二包に認内一包試

右、客香試み終りて出香十包打ち交ぜ炷き出す。十炷香のごとく札打つべし。客香ばかり試せしゆへ、正の札打つべし。客香出る処によりて名目替る。外、別事なし。客の名目左のごとし。

初客は 寝覚と書
二ウは 擣衣と書
三ウは 蛬 と書
四ウは 千鳥と書
五ウは 嵐 と書
六ウは 時雨と書
七ウは 霰 と書
八ウは 鐘音と書
九ウは 鶏 と書
十ウは 有明と書

名目諸々あれども此式古法なり。尚、記録の面にて見合はすべし。左のごとし。

(記録例 略)

きろく是に順ずべし。
全の人は十と書くべし。其の外、一二三の文字にて認むべし。猶、よくよく工夫有るべし。