白・黄・赤
重陽(九月九日)の節供の際に無病息災・不老長寿を願って「菊の被せ綿(きせわた)」と呼ばれる慣習があることは広く知られているところです。
前夜に菊の花に真綿をかぶせて、菊の香と露をうつし取り、九日の重陽にその綿で身を拭うと不老長寿が叶うといわれる行事です。
近世の宮中では、白い菊に黄色の綿を、黄色の菊に赤い綿を、赤い菊に白い綿を被せるのが様式となっていたようです。
「なるほどネ、白・黄・赤の三色を用いるんだ~」と、特に気にも留めていませんでした。
ところが、先日放送されたNHK「美の壺(選)~千年咲きほこる 菊~」の中で、華道・嵯峨御流トップの方が生けられた三色の菊の姿と菊に纏わるお話に目を見開きました。
※TV画面より
嵯峨御流では、重陽の生け方として菊を五色に生け、上から順に白・黄・赤になるように菊を生けるようです。
五色と云えば、陰陽五行の[木火土金水]に対応する[青赤黄白黒]の五色です。
お話では、白・黄・赤は菊の花で、青は葉の緑で、黒は器に水を満々と張ることで表現するとのことでした。
「水が黒?」と一瞬思いましたが、直ぐに「なるほど~」と納得しました。(五行の「水」は五色では「黒」に対応)
不謹慎かもしれませんが、素直に「面白い!」と思いました。 (^^)
番組では、先ず黄色の菊が生けられ、次に白い菊、そして赤い菊が生けられ、最後に八角の器に水が注がれていました。
上から順に白菊、黄菊、赤菊となっている姿からしても、嵯峨御流では色の「格」として、三色の中では白が一番高く、次に黄、そして赤の順になっているようです。
個人的には、八角の器に生けられたことから、八卦を象る意味も込められているのではないかと勝手に想像した次第です。
陰陽五行と八卦は、なかなか奥が深~いようです。 (^^)
と、ここで遠くの方から声が聞こえました。
「〇〇流では、金・銀・銅の順と云われているようだから、その場合は上から順に黄・白・赤になるのかしらん?」
「え~~~」
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外組48番【替寝覚香】
香四種
春として 四包に認め内一包試
夏として 右同断
秋として 右同断
冬として 右同断右、試み終りて出香三包づつ十二包有を、春夏秋冬三包づつ結び分け置く。右三包づつ四結びを結びながら打ち交ぜ、一結び取りて後、三包づつ九包の内へ右取りたる三包の内を二包除いて残りの一包を、始めの九包へ加へて十包にして炷き出す。春夏秋冬の内、何にでも一包出たるを客とす。
春一炷とおもへば 鶯
夏一炷とおもへば 郭公
秋一炷とおもへば 初雁
冬一炷とおもへば 千鳥尤も名乗紙なり。それ故、四種とも試み有るなり。札にても聞くべし。札のときは一二三客にて打ち、記録にうつす時に春夏秋冬鳥名文字に替ゆべし。又々、銘々聞くも四品の内、何れは客になるゆへ、正聞なれども正聞のつるびならでは点に成らず。考ふべし。客の出により、出香の下に歌一首書くべし。四季四鳥の歌左のごとし。
鶯の香なれば
ねさめしてまつそ聞つる軒ちかき竹の園生にうくひすのこゑ郭公ならば
今はまた夜毎に鳴てねさめする人を待ちけるほとゝきすかな初雁ならば
今よりの秋のねさめよいかならん初雁かねも鳴きて来にけり千鳥ならば
かよふらんこと浦人の寝覚まておもひしられて啼く千鳥かな尚、記の面にてよくよく考ふべし。左のごとし。
(記録例 略)
きろく是に准ずべし。