香道一口メモ・62【香室】
下の画像は、『和楽』2007年二月号に掲載された志野流家元・松隠軒での「競馬香」関連の写真です。(競馬香については、11月10日のblogに記しました。)
本床は掛物の前に卓を置いて香炉を飾り、訶梨勒は床柱に、霊絲錦は左側の柱に掛けてあります。
床脇には香道具を飾った志野棚が置かれ、押板中央に競馬香の盤、左端の文台の下には一枚札を入れた盆が見えます。
香道一口メモ・62【香室③】
床の間は四季の花鳥をふすま絵にした「四季棚(だな)」、その前に四季おりおりの造花をさした袋を飾り、天井からは釣香炉を下げる。生花は原則としていけない。床柱に霊絲錦(れいしきん・絹張りに春秋の草花を描いた一種の香袋)か、すみに訶梨勒(かりろく)を掛ける。書院には料紙、すずり箱などを置く。香道具は違い棚か、床わきに「香棚」をすえ、飾り付ける。
■以下の「 」付き説明と画像は、『茶席の香』(淡交社)の「香と茶にちなむ用語集」(太田清史)によります。
・四季棚=本床に置かれ、四枚の襖には四季の花鳥風月が描かれています。
・釣香炉=「鞠香炉などに飾り紐を付け、空薫用に書院などに吊り下げるもの。」
・霊絲錦=「邪気払いとして書院などの柱に掛ける柱飾り。長方形の箱状で、大中小がある。中に数種の香料を入れ、表裏に春夏、秋冬の景を描き、季に応じて使い分ける。」
・訶梨勒=「インド・東南アジア産の喬木、訶梨の実に模した室内調度。訶梨は薬種であり、水毒を解し大気を浄化するところから、その形状を木や金属で模して床柱に掛け、邪気払いとした。足利義政は東山山荘の柱飾りにしたともいわれている。今日では、錦の袋に入れ、色緒で飾り、茶席や香席の床に掛けることが行われている。」
・志野棚=「志野宗信、宗温父子によって創作されたと伝えられる香棚。桑製で四本柱を立て、上下に一枚板を置いてその間に違い棚を付け、左棚下部は観音開きの地袋で雲足が付く。香席中に置いて、組香用の皆具を飾るなどする。現在、茶道で用いられる利休袋棚は、志野棚を桐木地に改め、袋戸のつまみを変えたりしたものである。」
※霊絲錦
※訶梨勒
※左側は茶席の訶梨勒、右側は香道志野流の訶梨勒です。