八橋かきつばた園
花が咲いているうちに見ておかなくちゃ…と思い立ち、知立市八橋町の「無量壽寺・八橋かきつばた園」に出かけました。
園内の十数カ所に及ぶ「かきつばた池」の杜若はちょうど満開状態で、美しい姿をしっかり堪能しました。
『古今和歌集』巻第九に、また『伊勢物語』の第九段に、在原業平が八橋で「かきつばた」の五文字を句の初めに置いて旅の心を詠んだ歌があります。
からころもきつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞおもふ
『新日本古典文学大系』(岩波書店)によると、大意は次のようです。
「唐衣を繰り返し着てよれよれになってしまった「褄(つま)」、そんな風に長年つれ添って親しく思う「妻」があるので、その衣を永らく張っては着てまた張っては着るように、はるばる遠く来てしまったこの旅をしみじみと思うことだ。」
この歌は、この時季に好んで行なわれる組香【杜若香】の証歌にもなっています。
園内には、在原業平像と句碑が建てられていました。
お茶席も設けられていました。
和服姿の方がお点前をして薄茶を点てて下さいました。(望外の喜びでした!)
お茶碗は大樋の白楽茶碗で八橋を思わせる画がさりげなく描いてある大ぶりの素敵な茶碗でした。
掛物は「喫茶去」、お菓子銘は「唐衣」で、ぴったりでしたネ。(^O^)
※杜若の向こうに見えるのが茶室。
きちんとした良いお席でした。
もう一ヶ所、お隣の刈谷市にある「小堤西池のカキツバタ群落」へも足を延ばしました。
国の天然記念物に指定されているカキツバタ群落で、こちらも満開でした。
※紫色に見えるのがカキツバタです。
「小堤西池のカキツバタを守る会」を中心にして、ヨシ、アンペラい(根引草)などの除草作業が必要最小限の範囲内で継続的に行なわれているようで、整備保全が進んでいるように感じました。(以前訪れた時より、カキツバタは断然多くなっています!)
パンフレットに、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタの解り易い区別が載っていました。
カキツバタの一日でした。
[追記(5/17)]上図の花はいずれもアヤメ科ですが、端午の節供でショウブ湯などに用いられるショウブはサトイモ科で全くの別物です。ショウブの花は蒲の穂のような形をしています…。
※ショウブ(山と渓谷社『日本の野草』より)
詩歌をちこち 【松風香】
|『源氏物語』-松風- 288
| 尼君(明石の尼君)身をかへてひとりかへれる山里に 聞きしににたる松風ぞふく
〔大意〕尼に身を変えて、夫と別れ一人で帰ってきた大堰の邸に、かって明石で聞いたのに似た松風の音がきこえる。
*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)