谷口吉郎・鹿鳴館・寝覚香
NHKラジオ早朝の金沢発ローカルニュースで、建築家・谷口吉朗氏(明治37年~昭和54年)の業績を称えて、金沢市・谷口邸跡に記念館を建設することになったと報じていました。
谷口氏は帝国劇場、迎賓館和風別館、国立博物館東洋館、東宮御所等々を設計されたことで知られている建築家で、文化勲章を受章されています。
愛知県との関わりは、昭和15年に東京・鹿鳴館の取り壊しを目の当たりにした谷口氏が、金沢四高の同級生で親友でもあった名古屋鉄道の土川元夫氏に明治の建築物の保存を働きかけ、土川氏も共鳴して同社所有の犬山市・入鹿池丘陵地に明治村博物館が創られたという経緯があります。なお、明治村初代館長は谷口吉朗氏です。
また、谷口氏は愛知県陶磁美術館の設計者でもあります。
私が谷口氏を知ることになったきっかけは、昨年秋に名古屋八勝館で香席が開かれた際、予定されていた組香「寝覚香」の周辺知識の調べものからでした。
「寝覚香」は秋の組香で、砧(きぬた)、鹿、虫という秋を代表する、しかも音のする物を香三種に選び、これら秋の音を枕・眠りと関連付けて香りで聞くというものです。(香は、砧・鹿・虫・枕の四種です)
和歌では、秋の牡(オス)鹿の声が情趣あるものとされ、「万葉集」以来多く詠まれています。
中国の古書(詩経)では、「鹿鳴(ろくめい)の呦々(ゆうゆう)たる」と詠まれています。(尤も、芭蕉は「びいと鳴く」と詠みましたが…)
明治の社交場「鹿鳴館」の名の由来です。
これでやっとタイトルにした谷口氏と鹿鳴館と寝覚香が繋がりました。(少々強引!)
組香「寝覚香」については、晩秋の組香なので、遊び方はまたの機会にしたいと思います。