香道一口メモ・競馬香

香道一口メモも回を重ねて、今日は56・57の競馬香です。
競馬香は、京都・上賀茂神社で端午の節句に行われる競馬(きそいうま)に由来する組香。
盤物の一つで、参加者が赤方と黒方に分かれて勝負を競うゲーム性に富んだ組香であり、人形などを用いて駒を進めて行くところから、視覚的にも楽しめる組香といえるようです。

2007年『和楽』二月号には家元・松隠軒で名士8人によって行われた「競馬香」の記事が掲載されています。
赤方は、蜂谷宗玄家元、アナウンサー・渡辺真里氏、陶芸家・大樋年雄氏、俳優・辰巳琢朗氏の四名。
黒方は、能楽師狂言方・野村小三郎(現・又三郎)氏、花道家・小川珊鶴氏(盤者)、松隠軒社中・熊沢佳子氏(執筆)、蜂谷宗苾若宗匠(香元)の四名。

掲載記事によると、
◆香は四種
一として 四包で一包試
二として 同断
三として 同断
客として 三包で無試

◆聞き方と答え方
一、二、三の試しを聞いた後、
一、二、三、客の各三包ずつ計十二包を打ち交ぜ、その内二包を除き、残りの十包を炷き出して聞きます。

答え方は、掲載記事にわかりやすく書かれているので、以下に引用します。
「答は八角形の一枚札で示す。表は花紋で、裏に一~七の数字と客香を示す客の字(記録紙ではウと表記)が書かれている。8人分の一枚札を並べた盆が、一包聞くごとに回り、一だと思ったら象牙の簪(かんざし)を一にさして出す。全員の答えが出そろうと、盆を執筆に戻し、執筆が香包に隠されていた正解を発表。同時に全員の成績を記録する。この記録で赤方、黒方それぞれの正解数がわかるので、その合計数だけ、盤者が馬を進める。早く勝負の木にたどりついたほうが勝ちだが、通常、香を炷き終えた時点で勝負を決定する。」

十炷すべてを聞いて、合計点数の多い方を「勝」、同点なら「持」と書くようですが、当日は黒方が「勝」となっていました。

※八角一枚札(鳩居堂カタログより)

香道一口メモ・56【競馬香①】

競馬は馬を神の乗り物とする信仰から古代より神事として行われてきた。五月の、上賀茂神社の競馬の行事は平安時代の様式を伝えているそうだ。左方(赤方)から一頭先走りし終えると右方(黒方)から一頭走らせるという空走りの形を取る。ついで左右から一頭ずつ走らせ馬場端の鉾(ほこ)を早くすぎた方を勝ちとする。これを模した組香が競馬香。

香道一口メモ・57【競馬香②】

香組は四種を三包ずつ計十二包用意する。この内二包を空走りの意味から除き、出頭香数を十包とし、一炷(ちゅう)聞くごとに答えを出す。乗馬姿の人形を一対馬馳(は)せ板の上に並べ、赤方・黒方に別れた同人数の総合点で勝負木を目標に馬を進める。なお競馬の行事は単に勝負ごとを争うのではなく、その年の作物の豊凶を占うものであった。

※図録『香り』より