畳の寸法
茶師が袋に詰める碾茶は10匁(もんめ)。
1匁=3.75gですから、10匁=37.5g(約40g)。
茶舗で売られている抹茶は、40gが量り売りの一つの単位となっています。
日本では古くから尺貫法が用いられてきましたが、昭和53年(1959年)に尺貫法は廃止され、以後はメートル法を用いています。
尺貫法は、長さの単位を尺(しゃく)、質量の単位を貫(かん)、体積の単位を升(しょう)としたものです。
換算は、1尺=10寸=30.3cm、1貫=1000匁=3.75Kg、1升=10合≒1.8ℓといった具合です。
(今でも、面積を表す単位として土地1坪≒3.3平方㍍はよく見かけるところです)
茶道や香道などの伝統文化・芸能の世界では、現在でも昔ながらの尺貫法で表した方が解りやすい場合が多々あるように思います。
例えば、炉の大きさ。
一尺四寸の正方形となっていますが、42.42cm四方の表記では矢張りイマイチです。(1.4×30.3=42.42)
畳の大きさも尺を使った方が解りやすいように感じています。
・京 間(六尺三寸×三尺一寸五分)
・中京間(六尺×三尺)
・江戸間(五尺八寸×二尺九寸)…関東間との呼称も。
・団地間(?)
一尺=30.3cmですから、京間は畳一枚の大きさが約191cm×95cm、江戸間では約176cm×88cmとなり、大きな違いがあることが解ります。
従って、同じ八畳間と云っても、京間と江戸間(関東間)では、部屋の広さに天と地ほどの開き!?があることになります。
最近は生活スタイルの変化に合わせてなのでしょうか、畳の部屋が一つもなく、全てフローリングという住宅も多くなっていると聞きます。
京間の畳を使う建物は、千家をはじめとする茶家や茶室、寺社、料亭、あるいはこだわりの建物といった具合に、段々と限られていくようになるのかもしれません。
個人的に最も印象に残っている畳は「京都迎賓館」の和室の畳。
中継ぎ技法で作られた最高級の畳で、かって訪れた時に畳の目数を数えたところ、縁内で丁度64目ありました。
数寄屋畳は、京間の場合、目の数を通常の63.5目ではなく、64目とするのが正式だそうです。
茶道では「敷板を16目向うに置いて…」などとよく云いますが、16目という数字には根拠があることになります。
そう云えば、NHKEテレで放送されている「趣味どきっ! 茶の湯表千家」には、京都迎賓館の畳を手がけられた畳職人の高室さんが出演されていました。
普段は意識することのない畳ですが、奥はと云えば…それはそれは深そうです。
尺や寸で一つ思い出したことがあります。
以前、某所で[茶入・茶杓・仕服]の三器を拝見に出す時に、それらを並べる間隔についてお話がありました。
濃茶の平点前でしたが、三器は畳縁から10.5cm間隔に並べて出すと、炉の大きさの中に綺麗に収まるということでした。
10.5cm?…10.5cm?
聞いた時は一体何のこと?と思いましたが、すぐに頭の中の電卓が計算してくれました。
炉の大きさは一尺四寸、即ち約42cmですから、四等分すると3寸5分、約10.5cmとなります。
なるほど、メートル法的には約10.5cmとなりますが、個人的には断然3寸5分です。
伝統文化・伝統芸能の世界では、尺や寸は現在でもしぶとく生き続けているようです…。
※畳を製作する道具(展覧会図録『数寄屋大工-美を創造する匠-』より)
【付記】
・和楽器の「尺八」は、長さが文字通り一尺八寸であることからの名です。
・利休作の「尺八」は、千利休が秀吉の小田原征伐に随行し、韮山に陣を張ったときに作ったと云われる竹花入三本の内の一つです。(一重切「園城寺」・二重切「よなが」・「尺八」)
竹花入「尺八」は、逆竹で花窓のない寸切形で、高さは一尺にも満たない26.2cmとなっています。(裏千家所蔵)
この銘は一休和尚の楽器尺八の頌(しょう)の故事によったもので、これ以後細長くなくても、一節の寸胴切形を尺八と呼ぶようになったといいます。なお、逆竹を原則としているそうです。