今日は入梅?

暦の上では今日が雑節の「入梅」。
もっとも、東海地方は既に7日に梅雨入りの発表がなされています。

雑節の「入梅」は、黄経(こうけい)が80度の日(6月10日頃)で暦の上での梅雨入りとされています。
※黄経=黄道(天球上を太陽が運行する道)と赤道(地球の赤道面と交わる天球上の線)の交点(春分点)から東の方へ測った角度。
言葉だけではイメージが湧きにくいと思いますが、「黄道」で検索するとWikipediaにとても解りやすい図が載っていました。

「入梅」があれば「出梅」の日があっても良さそうですが、暦上にそのような日は無く、よく用いられる言葉は「梅雨明け」あたりでしょうか。
7月下旬の梅雨明けが待ち遠しいと云えば確かにそうなのですが、梅雨明け後の猛暑・極暑が今年もやってくるかと思うと、暑さもほどほどにと天にお願いしたくなります…。

梅雨には紫陽花がよく似合うようです。

よひら【四片】は紫陽花の花のこと。(お菓子銘にもありました!)

そう云えば、香道の組香に【梅雨香】(大外組)がありました。
2017.06.15付けのblog記事にありますが、[組香莚]の中にも収めています。
振り返ってみると、ちょっぴり懐かしいです…。

詩歌をちこち 【暮春香】

[和歌]

|①『古今和歌集』巻第二 春歌下 134
|  亭子院の歌合のはるのはてのうた  みつね
けふのみと春をおもはぬ時だにも 立つことやすき花のかげかは
〔大意〕今日だけで終るのだと春を思わない時でさえも、立ち去り難い花のかげであるよ。まして、今日は春の終りであるので立ち去り難いことだ。

|②『古今和歌集』巻第七 賀歌 351
|  さだやすのみこのきさいの宮の五十の賀たてまつりける御屏風に、さくらの花のちるしたに人の花見たるかたかけるをよめる  ふじはらのおきかぜ
いたづらにすぐす月日はおもほえで 花見てくらす春ぞすくなき
〔大意〕むなしく過ぎて行く月日は自覚しないでいて、花を見て暮すこの春の日は少ないことだ。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)


〔漢詩〕

人無更少時須惜
年不常春酒莫空

|『和漢朗詠集』巻上 春 47
人(ひと)更(かさ)ねて少(わか)きことなし時(とき)すべからく惜(を)しむべし
年(とし)常(つね)に春(はる)ならず酒(さけ)を空(むな)しくすることなかれ   野(や)

〔現代語訳〕少年時代は、二度とはこないものです。だから、わずかな時を惜しみ、むだにしてはなりません。季節は、一年を通していつも春というわけではありません。だから、春を惜しみながら酌む酒の楽しみを、今尽くそうではありませんか。

*漢詩出典『日本古典文学大系 和漢朗詠集・梁塵秘抄』(岩波書店)
*現代語訳出典『和漢朗詠集 全訳注』(講談社学術文庫)

※和歌二首は『和漢朗詠集』巻上 春 56・49にもあります。

※凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
※藤原興風(ふじわらのおきかぜ)
※野(や)=小野篁(おののたかむら)