重箱の隅を楊枝でつつくようなお話です。

BS時代劇「螢草 菜々の剣」に絡んで、露草の異名として螢草、帽子花、鴨跖草などをあげ、香道の香札銘[秋之部]にある「鴨跖」を(ぼうしばな)と読んだのは7月29日付のblog記事でした。

札銘については、以前ちょっとした興味を抱き、少し調べたことがあります。
伝えられているのは全て書写によるものですから、思い違いや読み違いから漢字が別の字に置き換わっているのは止むを得ませんが、読み自体に大きな違いはないと思っています。(^O^)

ところで、同[夏之部]に(ケンキ)と読まれている植物の札銘があります。
【●葵】(けんき)の●の字は、草冠に肩の旧字体で、『日本国語大辞典』や『新漢語林』にそのような字は見当りません。
でも、『大漢和辞典』にはあります。(パソコンなら文字を外字で作ればOKです。)

読みは(ケン)、この漢字一文字で、意味は[たちあふひ。はなあふひ。からあふひ]、即ち蜀葵のことです。
四季の香札銘は漢字二文字となっています。
そこで、この一文字では意味が良く解らないので、もう一文字「葵」を下に付けた札銘になっているのでしょうか。

以上、猛暑続きの為?に、重箱の隅を楊枝でほじくってみた次第です。(^O^)

そういえば、今日は「山の日」。
googleのロゴが山々になっていました…。

立葵の蕾です。

詩歌をちこち 【慶賀香】

[和歌]

|『古今和歌集』巻第七 賀歌 343
| 題しらず   よみ人しらず

わが君は千世にやちよにさざれいしのいはほとなりてこけのむすまで

〔大意〕わが君は、永遠の世々に、小さな石が大きな岩と成って苔が生い茂るさきざきまで長く、おすこやかにあらせられませ。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

※『曾我物語(仮名)』巻六 弁財天の御事
君が世は千代に八千代をさざれ石の 巌となりて苔のむすまで

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〔漢詩〕

嘉辰令月歓無極 萬歳千秋楽未央

|『和漢朗詠集』774
嘉辰(かしん)令月(れいぐゑつ)歓(くわん)無極(ぶきょく)
万歳(ばんぜい)千秋(せんしう)楽(らく)未(び)央(よう)    謝偃(しゃえん)

〔現代語訳〕このめでたいよい時節にあたり、私たちの歓びは果てしがありません。万歳千秋を祝って、私たちの楽しみは尽きることがありません。

*出典『和漢朗詠集 全訳注』(講談社学術文庫)