亥の月・亥の日は…

昨日は、東京国立博物館で催されている「正倉院の世界」展へ出かけ、守り伝えられてきた数々の宝物を堪能しました。
実は、ついでに東博で見ておきたい品物と場所がありました。

一つは、国宝の秋草文壺(慶應義塾からの委託品)でしたが、展示が終了したばかりとのことで今回見る事は叶いませんでした。
以前にも触れたような記憶がありますが、国宝に指定されている国焼5点中の一点です。
・秋草文壺(慶應義塾所有・東京国立博物館保管)
・色絵藤花茶壺 野々村仁清作(MOA美術館蔵)
・雉香炉 野々村仁清作(石川県立美術館所蔵)
・白楽茶碗「不二山」本阿弥光悦作(サンリツ服部美術館蔵)
・志野茶碗「卯花墻」(三井記念美術館蔵)

もう一つは、京都国立博物館で開催中の「三十六歌仙と王朝の美」展に関連して、バラバラにされた歌仙絵の売立が行なわれた益田鈍翁の旧宅「応挙館」(丸山応挙の襖絵があったことからの名称で東京国立博物館の庭園に移築?)の見学でしたが、生憎の雨ということで庭園には入れず、またの機会に持ち越しとなりました。(残念!)

一昨日(10/28)から旧暦では十月となり、初冬にあたる亥(い)の月に入っています。
とは云っても、立冬は11月8日ですから、季節的にはまだ秋というか、秋の土用の期間にあたっています。

昨日は旧暦十月(亥の月)の最初の亥の日でした。
亥の月・亥の日と聞くと、頭に浮かんでくるのは亥の子餅、そして炉開きでしょうか。

亥の子餅は、旧暦の亥の月・亥の日の一日限定で販売している菓子舗「たねや」の「亥の子餅」が秀逸の一品です。
シナモンが香ばしい美味しいお菓子です。

 

平安の昔、宮中では旧暦十月(亥の月)の亥の日に「御玄猪(おげんちょ)」の行事が行われ、亥の子餅(玄猪餅)をいただいて無病息災や子孫繁栄を願ったといいます。
昨年は、どういうわけか「玄猪包」にいたく興味を抱き、折り方・作り方をblog記事にした覚えがあります。
思えば、色づいた銀杏の葉をわざわざ採りに行ったりしたものです…。

亥(い)は猪(いのしし)に通じ、猪は多産であることから亥の子餅を食して子孫繁栄を願ったようです。(しかも亥の刻に…)

香道の組香では「源氏三習香」に、亥の子餅の風習の一端を垣間見ることができるようです。

◆香は三種
揚名之介として 二包で内一包試
とのゐもの袋として 同断
子のこの餅として 同断
客として 一包で無試

◆聞き方
試みを終えて、出香四包打ち交ぜ一包を除き、残り三包を炷き出します。

『源氏物語』との関わりや「子の子餅」の謂れについては、「三が一香・源氏三習香」として記事にした覚えがあります。
あの頃は、エネルギーがあり余っていたようです…。(^O^)

さて、茶の湯の「炉開き」です。

旧暦十月は亥の月で、陰陽五行・木火土金水の水性にあたります。
昔は、火難を逃れるために火を鎮める水性の月日、亥の月・亥の日に、囲炉裏や炉を開いたようです。
しかも、武家は一の亥の日に、茶家は二の亥の日に炉を開いたとか…。
尤も、最近は早ければいいということで、11月の声を聞くと早々と炉にしているようですが、炉開きの目安として「柚子の色づく頃」と伝承されている流派もあるように聞いています。

少なくとも今年に関しては、亥の月・亥の日は過ぎていますので、大手を振って「炉開き」しても良さそうです。(^O^)

上図の月は旧暦で、旧暦十月が亥の月、十一月が子の月、十二月が丑の月で気節は冬となっています。
旧暦は、二十四節気の冬至(12月22日頃)を含む月を十一月としています。
陰が極まった後、初めて陽が現れる時として、ある意味で一年の始まりともいえる月(子の月)となっています。
八卦を二段重ねにして十二ヶ月を表すには、下段に、上段にを重ねて表すことから解るように、一陽が現れるのが十一月。(は陽、– –は陰を象ります)
香道の組香には「一陽香」があり、そうした事柄が巧みに取り入れられていると聞いています。

晩秋の花・ツワブキ【石蕗】が咲いています。
石蕗といえば、香道の札銘〔冬の部〕にもその名がありました。(^O^)

※今日10月30日の22:30からNHKTVでNHKスペシャル「天皇が創った至宝~正倉院宝物」が放送されるようです。