系図香
今日から五月。
♪夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘みじゃないか 茜たすきに菅の笠
今日は八十八夜、立春から数えて88日目にあたる日です。
「八十八夜の別れ霜」と云われているように、以後は霜が降りる心配がなくなるので、農家では種まきの季節とされているようです。
辞書によると、米という文字を分解して書くと八十八になるところに、この日が由来するとか…。
茶摘みも例年通り順調に行われているのでしょうか。
新茶の新聞折り込み広告を見て、若葉が香る茶畑での茶摘み姿を思わず想像してしまいました。
お茶には抗菌作用があると聞いています。
この時季、生命力あふれる新茶をいただいて、一段と免疫力を高めるのもきっと効果アリアリですね。!(^^)!
茶の湯の世界では、炉を閉じて風炉へと移り変わる時季です。
炉中の五徳をあげ、灰を始末して、炉に蓋をする作業は毎年の習いになっています。
畳を炉畳から丸畳に替え、茶道具も風炉の季節に組み替えて、気持ちも新たに茶の湯と向かい合う時季となっています…。
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最近読んだ本の中に系図香の話が載っていました。
現在行なわれている「系図香」は、四種の香各四包ずつの計16包を打ち交ぜ、その中から四包とって炷き出します。
参会者は、香の異同を縦四本線の図を用いて、同香と思えばそれらを横線で結んで表し、付されている銘を添えて答えるという組香になっています。
系図を用いる組香は、四種の香を用いる所謂「系図香」だけではありません。
他に、三種の香各三包ずつ計9包から三包とって炷き出す「三種香」、五種の香各五包ずつ計25包から五包とって炷き出す「源氏香」があり、何れもよく行われているところです。
なお、香図の組み合わせは「三種香」が5通り、「系図香」が15通り、「源氏香」が52通りとなっています。
下は、四種の香を用いた「系図香」の香図です。
「系図香」の香図に付されている銘は流派によって異なるそうで、最大流派である志野流、そして御家流の銘は以下のようです。出典:本間洋子『香道の文化史』(吉川弘文館)
[志野流]/[御家流]
①初冠 / 春錦
②葎の宿 / 野守鏡
③関屋 / 高麗渡
④龍田 / 銀河
⑤春日野 / 煙競
⑥武蔵鐙 / 三角柏
⑦花筐 / 河社
⑧住吉 / 伏見里
⑨野中の蔀/ 百舌茎
⑩鳴子 / 鹿角菜
⑪八橋 / 竃景
⑫苅田 / 篠薄
⑬落葉 / 根合
⑭篝火 / 和歌浦
⑮小笹 / 常陸帯
志野流の銘については、その多くが『伊勢物語』から引かれていると聞いています。
御家流の銘は初めて見ましたが、どこから引かれているのでしょうか…。
※公園の藤の花が満開です。!(^^)!
(余談)系図を用いた組香としては三種の「三種香」、四種の「系図香」・五種の「源氏香」以外にも、古くは六種~十種まであったとか…。
因みに、系図の組み合わせは、六種で203通り、七種で877通り、八種で4140通り、九種で21147通り、そして十種では115975通りにもなるそうです。